いつも、雨
翌日の葬儀は、宣言通り親族席を固辞した。

しかし、抜かりなく義人を祖母にまとわりつかせた。


出棺前には秘書の原から、家庭裁判所に書類の提出を終えたという連絡があった。

要人は、まだなお引き留める喪主に、改めて佐那子の遺産放棄を報告し、淡々と辞去した。



その後も、法要の案内状が要人宛に届いた。

一応その都度、佐那子に行くかどうか尋ねたが、……佐那子は頑なに拒絶した。

要人は、毎回、喪主宛の自筆のお断り状とともに、義人と由未に祖母への手紙を書かせて、同封して送り続けた。



しばらくすると、佐那子の母親から孫宛に手紙やプレゼントが届くようになった。

佐那子は最初こそ戸惑っていたが、無視するわけにもいかず、子供達とともにお礼状や電話をかける羽目に陥った。


要人の腐心が実を結び、次第に佐那子は、当たり前の親子のように、母親と交流するようになった。


ちょうど自宅……というよりは、佐那子の夢の城の造成計画中だった要人は、当たり前のように姑の部屋を入れるように指示した。

茶を嗜まれると聞くと、本格的な茶室も建てることにした。


一山とまではいかないが、岡も竹藪も雑木林もあり、川と山が境界にある広い敷地には、これからもいくらでも建物を建設できるだろう。

それにしても、現在住んでいる自宅の周囲の土地を、寺と市から購入できたのは幸運なことだった。





梅の花が咲く頃、ようやく自宅の本館が完成した。

庭や、別棟はほとんど手つかずの状態ではあったが、掘り当てた温泉に入りたくて、とりあえず本館だけ急いだ。


しかし、本館で幼い由未が喘息のような症状を起こした。

いわゆるシックハウス症候群らしい。

少し遅れて、義人も頭痛がすると訴えた。


結局、引越しを取りやめて、建材を取り替えての改築となった。


「いいじゃない。この家で全然不自由してないんだし。……別に、引っ越しても、ココを壊すこともないし。」


元ヤクザの家とはいえ、佐那子は新婚生活を過ごしたこの家を気に入っていた。

小まめに掃除し、花を飾り、楽しんでいる。


要人の為に、甘い香りの紅茶を入れながら、佐那子は愛しげに天井や壁を見渡した。
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