いつも、雨
「……こんな日に、嫌な話をしてしまって、本当にすまない。……急かすつもりはないし、時機や条件は、君の望む通りにしてくれたらいいから。」

要人はそう言って、再びドアに手を掛けた。



……行ってしまう?


佐那子は、慌てて言った。

「わかりました!離婚します!」


要人の動きが、表情が止まった。


……自分から言い出したくせに……どうして、そんな……傷ついたような目をするのかしら。

このヒト……本当に……私や子供達が嫌いというわけじゃないのね。

そりゃそうよね。

だって、どれだけ私がぼんやりしてるからと言っても……、今日まで、全然気づかなかったもの。

マイホームパパというわけではなかったけれど、私にも、子供達にも、優しかったわ……。

……優しすぎたのかもしれない……。

愛する女性が他にいるのなら、もっと……素っ気なくしてくれたほうが……よかったわ……。

私、それでも、あなたを愛してる。

そして、あなたも、私を、愛してくれている。

……調子がいいようだけど、それって、本当のことね。


わかったわ。

だったら、私にできることは……。




佐那子は要人を見つめて、言った。

「あなたが望むなら、離婚します。慰謝料は、子供達が不自由しない保証をくだされば、それで結構です。時機は、橘領子さまの離婚が確定した時に。それまでは、これまで通りの家族でいてください。子供達の良き父親でいてください。」


さすがに、「私の良き夫でいてください」と続けることはできなかった。


だが、佐那子が自分を非難していないことは、要人にもそのまま伝わった。



……こんな時なのに……佐那子という女性の優しさと、強さに、打ち震えるほど感動した。

しかし……。

佐那子の提示した条件は、要人の思惑とは違った。

「……大変、寛大な申し出に感謝しかないのだが……、すまない……私は、領子さまの離婚の時には、身軽でいたいんだよ。勝手なことは重々承知だが、」

「ええ、勝手ですわ。それは、ダメ。……万が一、橘領子さまが、橘さまと離婚しなければ、あなたは生涯、独りになってしまうじゃない。……私も、子供達も、それじゃ納得できないもの。」
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