いつも、雨
佐那子は、要人の言葉を遮ってそう言ってから、ほほ笑んで見せた。

「男性は離婚してすぐに再婚できるけど、女性には再婚禁止期間まであるし、私との離婚が遅れたからと言って、あなたの再婚を遅らせることにはならないでしょう?……大丈夫。約束は守ります。その時になって、ゴネることはいたしません。離婚届に署名捺印したものをあなたに預けておいてもいいわ。」


……もちろん、区役所に離婚届不受理申請をしておくけれど。


最後にニッコリと盛大に笑って見せたことで、要人には佐那子の言わんとすることがわかった。


要人は肩をすくめて……それから、ふわりと佐那子を抱きしめた。

一瞬、佐那子は身を堅くしたけれど……そろそろと、要人の背中に両手を回した。


「……ありがとう。君の言う通りにしよう。……その日が来るまでは、今まで以上に、君達との時間を大切にするよ。約束する。」


佐那子の胸に、やっと、やるせない痛みが広がった。

「そうね。いい思い出を作ってください。……明日、突然家族でなくなるかもしれないって覚悟すれば、毎日、家族に優しくなれるでしょう?……私も……後悔したくないわ。」

そう言って、佐那子は背伸びをして、要人の唇に自分の唇を押し付けた。

不器用なキスがいじらしくて……要人は、深いキスで佐那子の想いに応えた。



要人は佐那子と出会う前から領子が好きだった。

だったら、佐那子の知る要人には、領子という存在が既に切っても切り離せなかったということだ。


……ただ、知らなかっただけ……なのに……。


要人自体は以前と何もかわらないはずなのに、佐那子は震えていた。

かつての充足感は、なくなってしまった。



好きなのに……苦しい。

私、今まで、どれだけ幸せだったのかしら。

本当に、幸せな恋だったのね。

実家とは切れちゃったけど……


……結婚して子供が2人もいるのに、今さら……夫に片想いしてる気分だわ……。

一生……片想いは、終わらないのかしら……。
< 295 / 666 >

この作品をシェア

pagetop