いつも、雨
「……口がお上手ですこと。……でも、わたくしが欲しいのは、言い訳みたいなそんな言葉じゃなくて……真っ先に、聞いてほしかったわ。……泣き腫らした理由を。逢わなかった日々のことを。」


責めているつもりはなかった。

でも結果的に、領子は要人に対する日頃からの不満を口にしていた。


……時間を作って逢いに来てくださることがうれしいから……それ以上望んだら罰が当たると思って、言えなかった。

でも、わたくし、本当は、ゆっくりとお話しがしたかったの。

わたくしの気持ちや日常、百合子の成長……それから、竹原は嫌でしょうけど、竹原のご家族のお話も、聞かせてほしかったわ。

お兄さまのこと、北海道の恭匡さんのこと……。


激情のままに抱き合うことも、意識が飛ぶほどの悦楽も、……もちろん、うれしいわ。

でも、それだけじゃ……足りなかったみたい……。

過ぎた行為で無理矢理泣かされても、それは単なる生理現象の延長でしかない。


わたくしたち……いつの間にか、本音で泣いたり笑ったりして、お話ししなくなったのよ……。

竹原……気づいてないのかしら……。



言葉にできない想いを反芻している領子を待って……要人は、じりじりと焦った。

「……そういや、宇賀神くんとは茶飲み友達でしたね。なるほど。領子さま。社交界のご友人たちから遠ざかって、お淋しかったのではありませんか?」

なるべく冷静さを取り繕ってはいたけれど、悪意と嫌味がちらちらと見えた。


「そうかもしれません。でも、……京都の生活も、けっこう気に入ってますのよ。どこをお散歩しても楽しくて。……一度でいいから、竹原とも、そぞろ歩きをしてみたかったわね……。」



……過去形?

俺とのことは、もう……終わったことだと言うのか?


要人は、たまらず、立ち上がった。

慌てて領子は後ずさりした。



「失礼します。」

折良く……というか、もしかしたらタイミングを見計らっていたのか……キタさんが紅茶を持って来た。



「……持つよ。重いだろう。……ああ、いい香りだ。」

要人はトレイごとティーセットを受け取ると、さっさとキタさんを追い出してしまった。
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