いつも、雨
吃驚して、領子は一夫を見た。


一夫は、領子に対する当てつけやイケズではなく、本気で要人を仲人に推していた。



「竹原って……」

「ほら、おとうちゃん、何年か前に仕事させてもろた、あの、竹原社長やろ!」

「あー、あの、成金御殿の……」


……成金……。

一夫の父と兄の会話が、胸に突き刺さる。

領子には、要人がどれだけ成功しても「成金」と言われることがつらかった。


「……竹原さんやったら、よぉ覚えてます。奥さまがご丁寧なお手紙をくれてはりましたわ。……確か、住所はこのへんやったような……。」

一夫の母が首を傾げた。


「そうそう。この少し奥や。……竹原社長は、えりちゃんのお兄さんと仲良しやねん。なあ?」

一夫の説明に、領子はぎこちなく頷いた。

「実際、わしとえりちゃんが出会えたんも、社長のおかげやし。ダメ元で頼んでみるわ。」


領子は、反対も賛成もしなかった。


……仲人……。

確かに、わたくし、竹原にそう言ったわ……。

でも、もちろん、本気じゃなかった……。

なのに……本当に、竹原に仲人を頼むの?


……奥さまは……佐那子さまは……引き受けてくださるかしら……。






たっぷり2時間かけての会食が終わった。

駐車場での別れ際に、一夫が領子の手土産を母に手渡した。

一夫の母は、うれしそうに受け取って、領子に言った。

「もしお兄さんが反対し続けはっても、うちはかまへんから、結婚してしもたらええわ。早速、一夫に図面書かせるし。家が建ったら引っ越しよし。」


「……ありがとうございます。」

領子の目に涙がにじんだ。


一夫の母は、うんうんと頷いて……それから、言った。

「ただなあ、領子さん。一つだけ頼みがあるんよ。……一夫と所帯持ったらな、一夫の稼ぎだけで生活してほしいねん。……領子さんのお金は、娘さんに……百合子ちゃんに、とっといたげよし。」

「……?」

領子は、首を傾げた。


意味がよくわからなかった。
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