いつも、雨
以前は、毎朝、玄関の打ち水をして清めたものだが……最近は、来客時と、日照りの続いた時ぐらいだろうか。

そんなつもりはなかったけれど……忙しさにかまけて、手を抜いていたかな。

要人は改めて、水を撒き、雑草を引き、枯葉を拾った。


昔はもっと頻繁に庭師にも来てもらっていたのに……いつから、年末の剪定のみになってしまったのか。

思い出せない。

……ギリギリのラインで、何とか対面を保っているのか……。

考えると、涙が出そうになった。


庭ばかりじゃない。

建物も、本当はあちこちにガタが来ている。

台風の夜には天井や土壁に雨じみもできてしまう。

まだハッキリと雨漏りすることはないが……それも、時間の問題かもしれない。

建て替えるのは非現実的として、修復の費用も馬鹿にならない。




息をついた要人は、白っぽい小さめの花が咲いていることに気づいた。

アサガオのような形だけれど、もう少し小ぶりで上品な花。

確か、これは……


「わ!ヒルガオね。かわいい……。」

イイ香りがすると思ったら、いつの間にか領子がすぐ近くに居た。

白いつばの広い帽子には薄いピンク色のドライフラワーのコサージュがついていた。

淡い小さな草花のドライフラワーは、とても可憐だった。


「領子さま。……水、撒いてますんで……蚊ぁに、噛まれんように、気ぃつけてくださいよ。」

「蚊ぁ?噛むの?」

領子の目がくりくりっと丸くなった。


「……言葉のアヤですよ。」

そう言って、要人は目をそらした。


「ふぅん……。」

領子は首を傾げて、それからヒルガオに手を伸ばした。

「わたくし、これが欲しいわ。」


要人は、おねだりされていることに気づいて、ちょっと笑った。

「……お土産、ですか?……そういえば、このところ、領子さまを置いて恭風さまと出かけることもなくなりましたから……以前のように、お土産をさし上げてませんでしたね。」


自分の意図を正しく理解してくれた要人に、領子はぱっと顔を輝かせて、こくこくっと何度もうなずいた。

「ヒルガオの花が欲しいのですか?」

改めてそう尋ねると、領子は続いて、首を縦に振り続けた。
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