いつも、雨
翌週の大安の朝、一夫は現場に行く前に、領子を駅まで送り届けてくれた。


……一夫の仕事は、要人のお陰で途切れることなく……いや、すぐにそれまでの体制では仕事をこなしきれなくなってしまった。

結局、必要な人数を確保するために会社もまた大きく発展した。

事務所兼用だった自宅では手狭過ぎるため、新社屋も建てた。

領子と百合子、それにキタさんは、会社にも家事にも煩わされることなく、ぬくぬくと優雅に暮らしている。


……一夫と……くやしいけれど、要人のお陰だ。




「いってらっしゃい。お義兄さんと恭匡くんに、よろしゅうな。……帰りも迎えに来るし、新幹線乗る前に電話ちょうだいな。」

「ありがとう。いってきます。……お土産、買ってきますね。」

笑顔で手を振って、領子は一夫のワゴン車を見送った。



「……相変わらず、仲のおよろしいことで。……妬けますね。」

背後から、皮肉っぽい声。


領子の笑顔が、すーっと冷めた。

「また、そんなことを。」


振り返った領子は眉をひそめていた。



……ほら。

また、そんな顔だ。

彼に……旦那に見せるような笑顔を、たまにはおれにも見せてくれないものかね……。


要人は苦々しさを隠して、ほほえんだ。

「おはようございます。今日もお美しい。……東京まで、お供します。」


当たり前のようにそう言った要人に、領子は息をついた。


……胡散臭い笑顔だこと……。


断わっても、無駄なことは身に沁みてわかっている。

諦めて、要人に背中を支えられ、歩き出した。



改札の手前で、秘書の原が新幹線のチケットを要人に手渡した。

もちろん領子の分と2人分あった。


領子は会釈して、要人から切符を受け取った。


朗らかな笑顔を封印しても、領子は美しかった……。



グリーン車に乗り込むと、要人は早速領子を抱き寄せた。

たいした抵抗もせず、領子は要人の胸に頬を埋めた。

「……逢いたかった……」

溢れ出る想いを込めて、要人はそうつぶやいた。
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