いつも、雨
「2週間ぶりですわね。」

領子は抑揚のない声でそう言った。


「16日です。半月です。……お変わり、ありませんでしたか?」

愛しげに領子の頬や髪を撫でながら、要人は言った。


領子は目を閉じた。

「いいえ。なんにも。……おかげさまで、主人の仕事が忙しくて、せっかくの春休みですが、旅行にも行けませんし。」



感謝というより恨み言だな……。


要人は、満足そうにうなずいて、シニカルに笑って見せた。

「では、私と行きますか?どこへでも、お連れしますよ。」


領子はやるせないほほえみを見せた。

「……今日のこの状態も、日帰り旅行みたいなものでしょう?……わたくしより、ご家族を旅行に連れてさしあげなさいな。……最近……悪い噂ばかり聞くわよ。大丈夫?……奥さまに……愛想つかされてるんじゃなくて?」



さすがに要人の笑顔が曇った。


領子は、ため息をついて、要人の頬をそっと撫でた。


……馬鹿ね……。

ほんとうに……どうして、こんなことになってしまったのかしら。

わたくし……、竹原の家庭を壊したくなくって……それもあって、一夫さんとの再婚に勢い付いたのに……。




「強がりではなく、家内は変わらず天使のようですよ。……私に女ができる度に、挨拶と気遣いを欠かさない……本妻の鏡、らしいですよ。」

要人の表情が歪んだ。


領子は、胸の痛みを覚えて、またため息をついた。

「お気の毒な奥さま……。竹原、最低。」


要人は、おやおやと眉をひそめて見せた。

「最低な男は、お嫌いですか?」


領子は、顔を上げて要人を正面から睨んだ。



……美しい……。

怒った顔の硬質な美しさは、また格別だな……。


要人は、たまらずに、領子にそっと口づけた。

唇を重ねるだけのキスで、ふるると領子が震えた。



……たまらないな。


官能をどれだけ重ねても、放蕩を繰り返しても、領子との時間には及ぶべくもない。



「もう……。やめてください。……こんなところで……。」

吐息混じりの小声に、ぞくぞくする。


「……誰も見てませんよ。……まあでも、後のお楽しみということにしておきましょうか。」


そもそも、グリーン車内は閑散としていた。
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