いつも、雨
「どや?百合子は、真面目にやっとるか?」

兄の恭風に問われて、領子は慌ててうなずいた。

「はい。やはり偏差値の高い優秀な子達ばかりなので、真面目にお勉強しないと酷い成績になっちゃうようですわ。……竹原の息子さんの……義人さんは、ずっと首席なんですってね。」


要人は、小声で

「恐れ入ります。学業はともかく、素行はよくないですが。」

と、こぼした。


恭風が鷹揚に何度かうなずいた。

「ああ。聞いてるで、義人くん、派手に夜遊びしてるらしいやん。せやのにトップかいな。すごいなあ。……由未ちゃんは?マイペースに中学生活楽しんではるんか?」


ぴくり……と、恭匡が小さく反応をするのを目の端に確認して、要人はほほえんだ。

「マイペースと言うわけにもいかないようです。たまたま仲良くなったお友達が、とても優秀なお嬢さんで……入試からずっとトップだそうで。親友からスパルタ教育を受けていますよ。」


「へえ!由未ちゃん、大変やな!お兄ちゃんも友達もトップかいな!プレッシャーやな~~~。」

恭風の言う通り、由未は成績優秀な2人に多少いじけていた。



……かわいそうに……。

恭匡は、無表情の仮面を付けながらも、内心、ドキドキしていた。




「まあ、竹原も、佐那子さんも優秀やから。なんだかんだゆーても、義人くんも、由未ちゃんも、大丈夫やろ。……問題は、百合子やなあ。恭匡、家庭教師してやったらどうや?」

恭風は飄々とそんなことを言い出した。


恭匡は眉をひそめた。

「東京から京都へ通えと仰るのですか?」


……由未ちゃんのためなら喜んで通うけど……百合子じゃあな……。


つれない恭匡の態度に、領子は苦笑した。

「もう。お兄さま。やめてください。冗談でも、恭匡さんに失礼ですわ。……恭匡さん、サークルはどうなさいますの?今時の、テニスサークルとか?入られますの?」


恭匡は肩をすくめた。

「まさか。興味ありません。」


恭風が顔をしかめた。

「……少しは遊んで来いっちゅうねん。そんなんじゃ、いつまでたってもカノジョできひんわ。」


恭匡はキッと父の恭風を睨み付けて……、すっくと立ち上がった。


食事も終わった。

これ以上の長居は無用だろう。

酔っ払いの戯言に、つきあってられるか。


「失礼します。おばさま、ありがとうございました。橘さんによろしくお伝えください。……竹原も。ありがとう。美味しかったです。」

恭匡はそう挨拶して、辞去した。
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