いつも、雨
「嘘つきね。竹原。……飲酒運転で捕まらないようにね。」

口を尖らせた領子がかわいくて……、思わず要人は、アクセルを強く踏んだ。





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「今日は、素直ですね。」

デイユースの予約を入れていたホテルの一室で抱き合った後で、要人はそう言った。


要人の腕の中で、領子は幸せそうに緩みきった顔で、とろーんとしていた。


「……お酒のせいかしら。……それに……なつかしかったわ。」

拙い口調もかわいくて、要人は領子にキスを繰り返した。








「家庭教師の件ですが……どなたかご紹介いたしましょうか?」

帰り支度を始めた領子の背中に、突然要人がそう尋ねた。


「何のこと?」

すぐにはわからず、領子は髪を整えながら振り返った。


「百合子さまの、家庭教師ですよ。恭匡(やすまさ)さまに京都まで来ていただくわけにはいかないでしょう。誰か、優秀な女子大生を……」

ジトーッと領子が嫌な目で見ていることに、要人は気づいた。


そして、思い出した。

数年前に、要人の家庭教師をしていた女子大生の誘いに迂闊に乗ってしまって、不倫関係になり、手を切るのに骨が折れて、随分ともめたことを。



コホンと要人は咳払いをした。


領子は、気まずそうな要人を黙殺して……ぽつりと言った。

「……あの子……好きなヒトができたようですわ。おつきあいしてるのかしら。……何となく……もう子供じゃないのかなって……。」


頬を染めて、領子は言葉を濁した。


……さすがに、ハッキリと言葉にすることはためらわれた。

娘が既に男に抱かれて、処女ではない……。


目くじらを立てることではないだろう。

領子だって、同じ頃、要人とそういう関係になった。


百合子にイイヒトができてもおかしくない。

そう自分に言い聞かせて、領子はなるべくクールに娘の恋を受け止めようとしていた。




要人もまた、実の娘とは口にできない立場上、余計なツッコミはできない。

「ほぉ?では、ようやく愚息に愛想が尽きましたかな。」


息子の義人を便利に引き合いに出して、そう尋ねた。
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