いつも、雨
「……親の因果が子に報う……かしら。」

領子はそうつぶやいて、しょんぼりとしてしまった。


要人もまた、何も言えず……困り果てた。



……余計なことをしてしまった。

もちろん、領子との関係を、百合子の存在を後悔する気持ちは微塵もない。


要人は、息子の父親に対する反発や対抗意識、憧憬や卑屈な想いといった葛藤を思いやることができなかった。



「もう、子供じゃないのに……論旨をすり替えて、頭ごなしに叱ったり、適当なことばで言いくるめられると思った私が、間違っていました。」

沈黙の後、ようやく要人はそう言った。



領子もまたため息をついて、それからしみじみとつぶやいた。

「……百合子に……打ち明けるべきでしょうか。」


要人の顔が歪んだ。

「……いや。それは、おかわいそうだ。……打ち明けるなら、百合子さまではなく、義人にしたほうがいいでしょう。……失礼ながら、百合子さまと義人では対等な恋愛関係だとは思えない。」



百合子が義人に惚れきっていることは確かだが、義人の気持ちは百合子にはない。

自分に言い寄ってくる女の子の1人……それなら、まだいい。

子供の頃、義人は、妹の由未を侮辱した百合子に対して「復讐」という言葉を用いるほどに怒っていた。

あの頃の恨みを晴らすためだけに、百合子を弄んで捨てる……そこまで性格の悪いことはしないにしろ……心のどこかで残忍な充足を得ているかもしれない。


要人は渋い顔で、息子の心を想像して、ゾッとした。




「……百合子は……不幸な恋をしているのでしょうか……」

領子の表情が曇った。


要人は、目を伏せて頭を下げた。

「すみません。……相手が愚息だとすれば、一時的な達成感は得るかもしれませんが……幸せな恋愛とは言えない。」


「でしたら!何も仰らないで……。」

領子の瞳が揺れた。



「……領子さま……。」

「わたくしも、義人さんと百合子では上手くいくとは思えません。わたくしたちがとやかく言わなくても、自然にお別れするでしょう。……かわいそうですけど……一日も早く、義人さんに百合子がフラれるのを待つのを祈って待ったほうが、結果的には百合子の負う傷は浅いと思うのです。……ダメかしら?」

涙目でそう問われて……要人は苦笑して、首を横に振った。
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