いつも、雨
「ご報告があります。」





いっぽう、領子が甥の恭匡から結婚の報告を受けたのは、2月。

雪のちらつく寒い日のお昼前、恭匡は初めて叔母の領子の自宅を訪問した。

さすがに電話で済ますことではなかったらしい。




「まあ。恭匡さま!お一人ですか?……奥さま!領子さま!恭匡さまが!」


玄関先でキタさんが騒ぐのを聞いて、領子も慌てて出迎えた。



「ごきげんよう、おばさま。」

ニコッ……と、恭匡は、子供の頃のような笑顔を見せた。


「……ごきげんよう。恭匡さん。」


健康そのものの艶やかな頬に、甥がいかに充実した食生活を送っているかを垣間見て、領子はそれ以上何も言えなくなってしまった。


……幸せなのね……。

それだけで、もう、充分だった。


領子は、恭匡の「報告」を、全面的に、笑顔で受け入れる決意をした。



しかし、それは、領子の予想とは少し違った。


……いや、「報告」の内容は、想定通り、由未との結婚だった。

しかし、その後に続いたのは、たった独りの甥から、もっとも血の濃い叔母に対するお願い事としては、いささか眉をひそめる内容だった。




「早くに両親を亡くした若輩の身では、何か心もとなく……結納のお品のご相談のみならず、婚礼全般、おばさまに教えていただき、助けていただけたら、と、思っています。……ですが、結納の臨席はご遠慮ください。」


……え?


領子は、一瞬、甥が何を言ってるかわからなくなった。



どういう意味?



黙って固まった領子に、恭匡はやわらかい言葉を付け足した。

「婚礼の式典では、おばさまだけでなく、一夫さんにも、私の親代わりとしてご挨拶いただくことになると思います。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。日取りは確定次第またご報告に上がりますが、11月に日比谷を押さえてますので、たぶんそれで決まるかとは思いますが。」




……親代わり……。


じんわりと、心に温度が戻ってきた。



領子は、少しほほえんだ。

「迷惑だなんて……わたくしも、主人も、少しでも、あなたの力になりたいのですよ、恭匡さん。何でも、させていただきますわ。結納だって、東京から来られるのは大変でしょう?実家だと思って、どうぞ、こちらにお泊まりになってください。」
< 438 / 666 >

この作品をシェア

pagetop