いつも、雨
恭匡は軽くうなずいた。

「ありがとうございます。頼りにしてます。おばさま。……でも結納当日はお仲人さまと行動を共にいたしますので。」



何となく、線引きされてる気がして、領子は鼻白んだ。

そして、思わず、言わなくていいことを言ってしまった。

「……結納に来るなと言うのは……わたくしが、天花寺の家名に泥を塗ったからですか?」



恭匡は顔を上げ、マジマジと領子を見た。


そうして、肩をすくめた。

「卑屈ですね。おばさま。……そんな昔のこと、みんな、とっくに忘れましたよ。それに、離婚・再婚なんか、珍しくもありませんから。お気になさいませんよう。……第一、家名も何も……おばさまは、今も橘姓でいらっしゃいますから。」


暗に、領子はとっくに天花寺家から出た人間だ……と、恭匡は言っていた。



領子の胸に痛みが走った。



泣きそうなのを無表情で隠す領子に、恭匡は追い討ちをかけるように言った。

「……なるべく、同席していただきたくないのですよ……。世間体がありますので、式典当日は仕方ありませんが、結納は内々のことですから、遠慮してください。」



愕然とした。



……そう……ずっと……疑っているのね……。

わたくしと、竹原との関係を。


……いえ。

疑いではないわね。

真実なのですもの。


……恭匡さん……ご存じなのね……。





しかし、認めるわけにはいかなかった。

領子は、敢えて淡々と言った。


「……何をおっしゃってるのか……今さら……。竹原には、あなたのお父さまの葬儀でも尽力いただきましたわ。」


1年半前のことを持ち出して、領子は、あくまで要人との関係は過去のものだと言外に主張した。




しかし恭匡の表情が、ゆらりと歪んだ。



領子は、ギクリとした。



思わず胸を押さえた領子に、恭匡は冷たい声で言った。

「おばさまとなるべく逢わせたくないのは、佐奈子さんですよ。……彼女にまた我慢を強いるおつもりですか。」




佐奈子さま……?

竹原の……奥さま……。



……それは、考えてなかったわ……。
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