いつも、雨
回数は減っても、時間は短くなっても……互いへの共依存は消えない。

むしろ、互いの家庭の幸せを喜び合い、ばかばかしい惚気のような悩みを愚痴り合う関係になれるならと領子はずっと願っていた。

さすがに要人が領子に家庭円満アピールをすることはなかったが、領子の想いを受け止めることはやぶさかではない。


……いつかは茶飲み友達に落ち着きたいのだろうか。


領子に対する情欲だけは消えそうにない要人も、さすがに加齢による衰えは自覚している。


辿り着く先に何があるのか……。

家族団欒に幸せを感じれば感じるほど、心の奥に鎮座する領子の幸せを強く切望するようになっている。


……むしろ、領子さまの穏やかな幸せを、俺は蹂躙しているのかもしれない……。


自信がないわけではない。

しかし、今さら2人が一緒になることを夢想する歳でもない。


……まさか、互いの配偶者の死を願うことなんぞできるはずもなく……




結局、時が移ろい、子供たちが大人になり、自らの肉体が衰えても、幼い頃から飽きもせず続くこの恋だけは変わらない。

おいてけぼりにされた心を持て余し、夢か現かわからない逢瀬に身をゆだねる。

カレンダーがめくられても、季節が変わっても……。



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秋、娘の由未が天花寺家に嫁入した。


幸せ一杯、順風満帆なはずだったが……翌年、由未は厄介な難病を罹患していることが明らかになった。

薬の開発のおかげでただちに生命が危険というわけではなかったが、妊娠出産は断念せざるを得なかった……。


家族として、父親として、嫁いだ娘にしてやれることは、たかがしれている。

どれほど社会的に成功しても、要人は己の無力を痛感せざるを得なかった……。




同じ頃、もう一人の娘……領子の産んだ百合子が、ようやく恋を成就させつつあった。

相手は、由未の大学の同級生で、恭匡とも友人付き合いをしている男だという。

家柄も血筋も、本人の頭も性格も、悪くない。

何より、恭匡のみならず、領子も彼……碧生(あおい)を、娘の百合子よりも先に気に入ってしまった。

最初は逃げ腰だった百合子も、周囲から固められ、逃げ場を失い、ついには陥落した。


翌年、百合子は碧生と結婚した。


さらに翌年、百合子は男の子を産んだ。


跡取りを望めない恭匡は、百合子たちを夫婦養子に迎えた。
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