いつも、雨
百合子夫妻は恭匡と由未の夫婦養子だ。
のみならず、百合子の夫の碧生と恭匡は無二の親友と言えるほど仲がいい。
とっくに橘家の異変を察知していることはおくびにも出さず、要人は佐那子に娘へ問合わせることを促した。
佐那子は少しほっとしたようにかすかに口元をほころばせると、すぐに娘の由未に電話をかけた。
会話の内容が気になって仕方ないところだが、敢えて要人は着替えるために部屋を出た。
……一夫が我が家に仕事に来なかった理由が、領子の急病でないことを祈って……。
普段着に着替えて居間に戻ると、佐那子が壁の時計を見上げて何か思案していた。
「夕食は?」
そう尋ねると、佐那子は慌ててキッチンへと向かおうとして……、足を止めて、振り返り、要人に言った。
「一夫さん、入院されたみたい。」
咄嗟に言葉が出なかった。
領子さまではなかった……。
よかった……。
心からの安堵を、聡い妻に見せるわけにはいかず……要人は表情を消し、それから言葉を紡いだ。
「……入院って、仕事で怪我でもしはったのか?」
佐那子は、また時計を見上げた。
「よくわからないけど、怪我じゃなくって、腸閉塞ですって。……ねえ、まだ面会時間だし、これからお見舞いにいきましょうか。」
「これから?」
行けるわけがない。
一夫の病室には、領子がいるだろう。
……自宅の出入が確認されないのは、おそらく……緊急入院することになった一夫に付き添っているに違いない。
要人は目を伏せて、抑揚のない声で言った。
「いや。俺は、よしておこう。……悪いが、明日の日中にでも、君が行って来てくれないか?」
「……わかりました。」
それ以上、佐那子は何も言わなかった。
純粋に一夫の身を案じる気持ちはもちろんあるが……やはり、わざわざ領子のいるであろうところに、夫の要人を連れて行く気にはなれない。
だからと言って内緒にするわけにもいかず、ずっとモヤモヤしていたが、ようやく気持ちが楽になった。
その夜の夕食は、結局、馴染みの店から運んでもらうことになった。
要人も、佐那子も、養女の希和子とそのお友達の前で失態を演じることもなく、いつも通り和やかな時間を過ごした。
ただ、いつもより遅くに帰宅した義人には、要人は無意識に、どうでもいいようなつまらないいちゃもんをつけて憂さ晴らしをした。
のみならず、百合子の夫の碧生と恭匡は無二の親友と言えるほど仲がいい。
とっくに橘家の異変を察知していることはおくびにも出さず、要人は佐那子に娘へ問合わせることを促した。
佐那子は少しほっとしたようにかすかに口元をほころばせると、すぐに娘の由未に電話をかけた。
会話の内容が気になって仕方ないところだが、敢えて要人は着替えるために部屋を出た。
……一夫が我が家に仕事に来なかった理由が、領子の急病でないことを祈って……。
普段着に着替えて居間に戻ると、佐那子が壁の時計を見上げて何か思案していた。
「夕食は?」
そう尋ねると、佐那子は慌ててキッチンへと向かおうとして……、足を止めて、振り返り、要人に言った。
「一夫さん、入院されたみたい。」
咄嗟に言葉が出なかった。
領子さまではなかった……。
よかった……。
心からの安堵を、聡い妻に見せるわけにはいかず……要人は表情を消し、それから言葉を紡いだ。
「……入院って、仕事で怪我でもしはったのか?」
佐那子は、また時計を見上げた。
「よくわからないけど、怪我じゃなくって、腸閉塞ですって。……ねえ、まだ面会時間だし、これからお見舞いにいきましょうか。」
「これから?」
行けるわけがない。
一夫の病室には、領子がいるだろう。
……自宅の出入が確認されないのは、おそらく……緊急入院することになった一夫に付き添っているに違いない。
要人は目を伏せて、抑揚のない声で言った。
「いや。俺は、よしておこう。……悪いが、明日の日中にでも、君が行って来てくれないか?」
「……わかりました。」
それ以上、佐那子は何も言わなかった。
純粋に一夫の身を案じる気持ちはもちろんあるが……やはり、わざわざ領子のいるであろうところに、夫の要人を連れて行く気にはなれない。
だからと言って内緒にするわけにもいかず、ずっとモヤモヤしていたが、ようやく気持ちが楽になった。
その夜の夕食は、結局、馴染みの店から運んでもらうことになった。
要人も、佐那子も、養女の希和子とそのお友達の前で失態を演じることもなく、いつも通り和やかな時間を過ごした。
ただ、いつもより遅くに帰宅した義人には、要人は無意識に、どうでもいいようなつまらないいちゃもんをつけて憂さ晴らしをした。