いつも、雨
「そうね。わたくしたちはとっくに覚悟していますが……わたくしと竹原で、あなたの分の罰も引き受けたいわ。」
心からそう言って、領子は目を閉じた。
……竹原……。
これも、わたくしたちの罪の報いなのかしら。
娘が、同じように、道ならぬ愛の沼に陥ってしまうなんて……。
「お母さま。わたくし、泉さんと地獄に落ちてもいい、破滅してもいい、って本気で思うこともありますのよ。でも、帰宅して、碧生くんや子供達と過ごしているときは、泉さんのことを思い出しもしませんの。身勝手ですね。」
百合子のつぶやきに、領子は苦笑した。
「……それでいいのよ。泉さんとご一緒のときは、家族のことは忘れて、泉さんの助けになることだけを考えなさい。でも帰宅したら、碧生くんと子供達のことだけを考えて、誠心誠意、尽くして差し上げなさい。それも愛ですよ。」
すん、と百合子が鼻をすすって、それから領子を見上げた。
……そうね。
お母さまは、ずっと、そうしてらっしゃったのね。
何十年も、はるか昔から、あのかたとそれほどに愛し合ってらっしゃるってことも、わたくし、よくわかっていなかったわ。
あのかたへの想いを家庭に持ち込まないように、いえ、その後ろめたさの分、わたくしたちに心を砕いてらしたのね
だから、わたくしも、橘のお継父さまも、あのかたとの関係に気づいても、お母さまを責められなかった……。
「……ずるい、かしら?」
娘に至近距離でじっと見つめられ、領子は責められているような気がして、恐る恐るそう尋ねた。
百合子は、ちょっと笑った。
「ええ。そうね。たぶん世間的には、ずるい女ですわね。でも、あのかたも、橘のお継父さまも、……わたくしも!……お母さまをずるいとは思いませんわ。不器用なりに精一杯誠実であろうとがんばってらっしゃると思いますわ。」
娘の言葉に、領子の涙腺が決壊した。
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いっぽう、せっかく忙しい時間をやりくりして恋人との情事を楽しむはずだった男2人は、彼女たちを見送った後、そのまま駐車場で立ち話をしていた。
打てば響くばかりか、思いも寄らぬことをさらりと口にする泉を、要人はずいぶんと気に入ったようだ。
車内から様子をうかがっていた秘書の原は、要人がちらりと自分を見たのを見逃さず、車から降りた。