いつも、雨
「……社長。」
呼ばれた理由を推察しつつ、ためらいがちに声をかける。
「ああ。すまない。近々、一席設けたい。店を見繕ってくれるか。」
「別にそのへんの居酒屋でかまへんで。今日みたいな上品な料理、いらんし。……せや。メシより、美味い酒、飲ませてーな。」
要人よりはるかにぞんざいで図々しい泉に、原の眉毛がぴくりと動いた。
「では、飲みに参りましょうか。……落ち着いて、話ができる店を頼む。」
「わかりました。……お日にちは、お決まりですか?」
原の問いにも、要人ではなく、泉が答えた。
「明日から競走で4日間缶詰めやねん。……せやな……最終日。伊丹に夜7時頃着くわ。それからで、かまへん?」
……なるほど、レースに向かう前に、百合子と過ごしたかったのか。
邪魔して悪かったかな。
要人は、多少申し訳なさを感じて、お詫びのつもりでつけ加えた。
「わかりました。それでは、遅くなりそうですので、お部屋も取っておきましょう。……ゆっくりと、お使いください。」
「ああ。そのつもりや。おおきに。使わせてもらうわ。」
ニヤリと笑う泉に、要人もまた苦笑で返した。
さすがに、百合子と使え、とは言えなかったけれど、それはもう暗黙の了解だった。
では……と、原の先導で車に向かおうとした要人の背後で、泉がつぶやいた。
「そうか。オヤジさん、由未に似てるんか。」
要人は思わず振り向いた。
「……娘を……由未も、ご存知でしたか。」
「ああ。だいぶ前やけど、レースで落車したとき、由未が百合子を連れてきてくれたことがあってんわ。百合子よりよっぽど、できたええ女やったわ。身体よぉないねんて?大丈夫け?」
容姿だけなら、百合子の圧勝だ。
なのに平凡でしかない由未を賞賛した泉に、要人はますます好印象を覚えた。
「……ありがとうございます。難病ではありますが、ひとまず、薬で病気の進行を抑えられているようです。副作用は出るようですが……何とか、元気にやってます。」
「そうか。よかった。大事にしてやって。」
そっけない口調なのに、心が伝わってきた。
要人は黙って深々と頭を下げてから、車に乗り込んだ。
呼ばれた理由を推察しつつ、ためらいがちに声をかける。
「ああ。すまない。近々、一席設けたい。店を見繕ってくれるか。」
「別にそのへんの居酒屋でかまへんで。今日みたいな上品な料理、いらんし。……せや。メシより、美味い酒、飲ませてーな。」
要人よりはるかにぞんざいで図々しい泉に、原の眉毛がぴくりと動いた。
「では、飲みに参りましょうか。……落ち着いて、話ができる店を頼む。」
「わかりました。……お日にちは、お決まりですか?」
原の問いにも、要人ではなく、泉が答えた。
「明日から競走で4日間缶詰めやねん。……せやな……最終日。伊丹に夜7時頃着くわ。それからで、かまへん?」
……なるほど、レースに向かう前に、百合子と過ごしたかったのか。
邪魔して悪かったかな。
要人は、多少申し訳なさを感じて、お詫びのつもりでつけ加えた。
「わかりました。それでは、遅くなりそうですので、お部屋も取っておきましょう。……ゆっくりと、お使いください。」
「ああ。そのつもりや。おおきに。使わせてもらうわ。」
ニヤリと笑う泉に、要人もまた苦笑で返した。
さすがに、百合子と使え、とは言えなかったけれど、それはもう暗黙の了解だった。
では……と、原の先導で車に向かおうとした要人の背後で、泉がつぶやいた。
「そうか。オヤジさん、由未に似てるんか。」
要人は思わず振り向いた。
「……娘を……由未も、ご存知でしたか。」
「ああ。だいぶ前やけど、レースで落車したとき、由未が百合子を連れてきてくれたことがあってんわ。百合子よりよっぽど、できたええ女やったわ。身体よぉないねんて?大丈夫け?」
容姿だけなら、百合子の圧勝だ。
なのに平凡でしかない由未を賞賛した泉に、要人はますます好印象を覚えた。
「……ありがとうございます。難病ではありますが、ひとまず、薬で病気の進行を抑えられているようです。副作用は出るようですが……何とか、元気にやってます。」
「そうか。よかった。大事にしてやって。」
そっけない口調なのに、心が伝わってきた。
要人は黙って深々と頭を下げてから、車に乗り込んだ。