いつも、雨
翌日、当たり前のように、要人は、買い物途中の領子を拉致した。

昨日の分も込めていつも以上に激しく甘く想いを遂げた後、要人は領子に報告した。


「泉勝利くんと飲みに行く約束をしました。」

「あら。」


ぐったりしていた領子が、むくりと上半身を起こして、要人を見た。


領子の表情に、嫌悪感がないことを確認して、要人は安堵して微笑んだ。

「おもしろい男でしたのでね。ゆっくり話を聞いてみたくなりました。」


すると、領子も笑顔になった。

「わたくしも。泉さんのお仕事を拝見したいと思いましたわ。来月、大阪で大きなレースがあるそうですので、行ってみようと思っています。」

「領子さまが?競輪場へ?それは……」


さすがに驚いたが、領子は楽しみにしているようだ。


要人は小さく息をついて、それから遠慮がちに尋ねた。

「ご一緒してお守りしたいところですが、ご家族で行かれるんですよね?……関係者席を手配させましょうか?」


領子は、苦笑した。

「過保護ね。けっこうよ。主人とわたくしは初めてですけど、百合子たちは馴れているようですから。よい社会勉強になると聞きましたわ。」

「……よい……かどうかはわかりませんが……」

「いいのよ。……ずっと、わたくし、碧生くんと百合子がギャンブル場に行くことに納得してませんでしたし、疑問でしたのよ。でも、昨日、もっと娘を理解したいと思いました。百合子が、竹原とわたくしとのことに理解を示してくれたように……わたくしも、あの子が何に惹かれ、何に悩んでいるのか、もっと知りたいのです。」


慈愛に満ちたほほえみが、要人にはとても侵しがたく、まぶしかった。



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その夜、帰宅した要人は、妻の佐那子の笑顔に違和感を覚えた。

いつものように、孫娘の進(まいら)の手を引き、わざわざ要人を玄関先まで迎えに出て来たのだが……


「ただいま。……何か、あったか?」


佐那子は目を見開いて、それから、ぶるぶると首を横に振った。

「何もないわよ。」


明らかに、怪しかった


要人は、膝を折ってしゃがむと、8歳の孫と視線を合わせて尋ねた。

「ただいま。まいら。今日は、何してた?どこかへお出かけしたかな?」
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