いつも、雨
……どうしよう。
会いたくないと言えば、嘘になる。
謝られたいわけではないけど、その過程を踏むことで、お互いのわだかまりがなくなるのなら、うれしい。
でも……恭匡さんが、拗ねそうで……怖い……。
知らず知らずのうちに、ため息をついてしまった。
ダメダメ。
恭匡さんに気づかれてしまうわ。
雑念を振り払うかのように、ふるるっと頭を振った。
「はーい。お茶が入ったよー。」
敢えて明るく振る舞ってみた。
「ありがとう。ん~。イイ香り。美味しそう。いただきます。」
きちっと手を合わせてから、恭匡は紅茶を一口飲み、ニコッと笑顔を見せた。
「美味しいねえ。は~。幸せだよ。それじゃ、待望の、……どっちにしようかな~……ん~……アプリコットから!」
恭匡は子供のように迷って、はしゃいで、小さなクッキーを味わった。
瞳が、キラキラと輝いた。
どうやらお口に合ったらしい。
よかったよかった。
由未も、手を伸ばし、チョコレートのクッキーを口に入れた。
ほろほろと崩れる優しい優しい甘さが、じんわりと美味しくて……なぜか、由未の目からポロッと涙がこぼれ落ちた。
目ざとく恭匡は見ていたが、気づかないふりをした。
……触れてはいけないと直感した。
二年間神戸の高校に通った由未にとって、このクッキーには何らかの思い出があるのかもしれない。
その間、由未が、自分ではない、別の男に恋していたことも、もちろん知っている。
いかに嫉妬深い恭匡でも、過去をほじくり返して責め立てることがどれほど不粋かぐらいはわかっていた。
むしろ、由未自身のほうが、自分の意志を無視してこぼれ落ちた涙に、驚き、戸惑った。
……どうしよう……。
恭匡さん、気づかないふりしてるけど、気づいたよね。
私もスルーしたほうがいいのかしら。
でも……。
由未は、少し考えて、それから勇気を振り絞って言ってみた。
「……高校の時の部活のメンバーで集まるみたいねんけど……私も誘われてるねんけど、いつも断わってて……いっぺん、行ってきてもいい?」
恭匡の顔から表情が消えた。
沈黙が続いた。
……助けて……ダメならダメってあっさり言ってくれたほうが、ありがたいわ……
由未もまた、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。
しばらくして、おもむろに恭匡がニッコリと笑顔を作った。
そして、軽やかに言った。