いつも、雨
「もちろん、いいよ。行っておいで。でも、イロイロ心配だからさ、僕のお願いも聞いてね。」
……心配って……。
さすがにそれ以上聞けなくて、由未は、こくこくと何度もうなずいた。
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「それじゃあ、佐々木和也くんに逢えたの?」
季節が移り、紫陽花の花が色とりどりに咲き誇る頃、再び、由未は母と2人きりで実家の温泉で語らうことができた。
「……うん。和也先輩が帰ってくる度に、みんな集まってはったんやけど、今回は世代が違うOGにもマネージャーにも声をかけて、居酒屋を貸し切っての飲み会やったの。」
「よく、恭匡さま、行かせてくださったわねえ。……まさか、ご一緒についてらっしゃったの?」
由未は苦々しく笑った。
「お店の前まで、車で送り迎えしてくださったけど、さすがに中には入って来なかったわ。……これ見よがしに、あおいちゃんと頼之さんに挨拶してはったけど。」
「しっかり牽制なさったのねえ。……でも、それじゃ、由未、肩身狭かったんじゃない?からかわれへんかった?」
母の言葉は的確だった。
由未は脱力し、甘えるように母にくっついた。
「……どん引きされてた。恭匡さん、私に着物で行かせたの。安いチェーン店の居酒屋の飲み会に、上品すぎる菖蒲の付け下げを着付けたのよ。浮きまくりやわ。恥ずかしかったわ。」
ぶぶっ……と、佐那子が、笑いをこらえきれず、吹き出した。
由未は、いたたまれなさを思い出し、お湯の中に頭まで浸かった。
……が、肺に負担が大きいかも、と思い直し、慌ててまた顔を出した。
子供のように潜って上がってきた中年の娘の髪を整えてやりながら、佐那子は話した。
「わかるわ。その状況。私もねえ、学生時代、たまたま合コンのピンチヒッターに引っ張られた日に限って、お茶のお稽古が長引いてしまって、すっかり遅刻してしもたから、お洋服に着替えずにお着物で行ったら……その後、二度と呼ばれへんかったわ。」
「……お母さんも、合コンとか行ってたんや……」
恭匡の管理下で大学生活を送った由未は、クラスやゼミの飲み会にさえも一次会のみの参加で、とても満足には参加できなかった。
ましてや合コンなんて、一度もない。