いつも、雨
いじけそうな娘の肩に、そろそろとお湯を手でかけてやりながら、佐那子は弁解した。

「女子大やったからねえ。サークルにも入ってへんかったし。他の大学との飲み会は、イコール合コンって感じやったわ。まあ、私は地味で真面目な学生やったから、数えるほどしか誘われなかったけど。」


「……地味で真面目な学生が、起業家のお父さんと、何で駆け落ちなの?できちゃった結婚でもないのに。」


娘に改めてそう聞かれて、佐那子は困ったように首を傾げた。

「何でやろねえ。仕事なら、お父さん、もう少しゆっくり根回しして、穏便に縁談を進めはりそうやのにねえ……。たまたまタイミングが合わず、私が突っ走ってしもたしかなあ。」


遠い目をした佐那子の口元がゆるんだ。

「好きやったからねえ。仕方ないわ。」


含蓄深い母の言葉に、由未は黙って頷いた。



「私のことはいいから!ほんで?佐々木和也くんとは?お話できたの?」

慌てて、佐那子は話題を変えた。


「……恭匡さんの条件の1つにね、誰であっても、男の子と2人きりにならない……ってのがあって……それを、また、わざわざあおいちゃんに、見張ってるようにお願いしはってん。それで、あおいちゃん、開き直ってしまわはって……宴もたけなわ、みんな酔っ払ってしまってから、無礼講の告白タイムとかゆーて……当時言えなかった先輩への文句とか好きとか、わいわい言い合わせはって……そのどさくさの中で、謝られたといえば、謝られたわ。」

由未は、憮然としていた。



もちろん、佐々木和也との復縁を求めていたわけではないし、これからの関係をわざわざ新たに築くつもりもない。

だが、あまりにもデリカシーのない場で真面目に謝られても、みんなの酒の肴になってしまっただけで……ますます居心地が悪くなってしまった。

和也にしても、酒の勢いで謝罪しても、スッキリしてない。

形だけの和解は、虚しさと、変な未練を生じさせてしまったようだ。


「はあ……。恭匡さまってば、ほんっとに……。……愛されてるわねえ、由未。よかったねえ。……で?何て言われたの?佐々木和也くんに。謝られたって?どういうこと?」


思わず恭匡をディスりそうになり、慌てて佐那子は矛先を変えた。


由未は、ためらいがちに、言葉を選び選び、説明した。
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