いつも、雨
あおいは、恭匡が席を外したわずかな隙をみて、由未に謝った。

……病の悪化の原因が、佐々木和也との一件にあると確信しているらしい。


由未は否定したが、あおいには通じなかった。


「ほんまにごめん。デリカシーなかった。わーっと盛り上がって終わると思とったのに……由未ちゃんは寝込むし、佐々木の猿は成績がた落ちでクビになるし。マジ、反省してる。ごめんなさい!」


……和也先輩……クビ……?

それも……私のせい……なの……かな……。



悶々としていても、何も変わらない。

ただ、時だけが流れた。



和也は、短いサイクルで欧州のクラブチームを転々とするとになってしまったので、その都度ニュースとなった。


あおいからの情報によると、和也の妻子は帰国して神戸で暮らしているらしい。

遠い国で孤軍奮闘している和也を想うと……いつまでも落ち込んでいる自分が情けなく惨めな気がした。



……負けてられない。


変な対抗意識が由未の中に芽生えた。

心の支えと言われたプライドかもしれない。




数年かかって、由未の身体は……良化することはなかったけれど、少なくとも病気の進行は止まったようだ。

休み休みではあるものの、かつてのように料理以外の家事も始めた。

これまで以上に、恭匡は由未を手伝い、支えた。



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由未の通院頻度が月1度にまで減った頃、佐那子に違変が生じた。

だいぶ前から肩凝りによる頭痛が酷かったが……ただの血行不良というわけではなかったらしい。



「甲状腺癌……。癌……ですか……。」


かかりつけ医からの紹介状を持って、検査を受けに行った総合病院で、ずいぶんあっさりと病名を告げられた。

佐那子は、現実感のない悲劇に首を傾げた。


癌イコール死の宣告という時代ではない。

現に、14年前に大腸癌の摘出手術をした橘一夫は、肝臓に転移した癌を、その後幾度となく化学療法で封じ込めながら、元気に楽しく生きている。

だから、佐那子の癌も、取れば大丈夫。


担当医の説明もあり、家族も本人も、比較的楽観的に考えた。



実際、手術は簡単に終わった。

しかし、喜んだのも束の間……術前のPET検査で大腸に巣くった癌も見つかったと、退院前に告げられた。

さすがに、楽観視できなくなってしまった。
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