いつも、雨
「……ありがたいけど……重病人じゃないのに……。」
大腸に癌があるとは言え、ごく初期段階のため、まったく自覚症状のない佐那子は、本気で恐縮していた。
「ステージ4の癌が重病じゃないわけないだろう。」
そう言って、要人は荷物を引き受けながらも、佐那子の手を取りエスコートまで試みた。
「……ありがとう。」
佐那子の頬が緩んだ。
何だかんだ言ってもうれしそうな佐那子を見て、要人もまた微笑んだ。
「ずっと付き添うのは難しいが、毎日来るようにするから。欲しいものがあれば、他の者ではなく、私に言いなさい。」
「……え……大丈夫?」
さすがに、佐那子は驚いた。
送迎も買物も、秘書の原や芦沢、運転手の井上に頼むのが常だったし、前回の入院時もそうしてきた。
忙しい要人に、雑用を頼むことなんてできるわけがない。
要人には、なるべく迷惑をかけないよう、家の事で煩わせないようにしてきた佐那子は、困惑した。
しかし要人は当然のようにうなずいた。
「遠慮はしなくていい。何でも言いなさい。」
「……はぁい。じゃあ……毎日、まいらとイザヤの写真撮って来てくれる?」
佐那子の望みは、要人の意表を突いた。
孫とペットの鳥の写真を……俺が、自分のスマホで撮影するのか?
これまで全くやってこなかったことを求められ、要人は一瞬たじろいだが、佐那子の期待できらきらした瞳に負けた。
「わかった。毎朝、撮ってくるとしよう。……他には、ないか?食べたいものとか……。」
しかし、この問いかけに対する佐那子の返答もまた、要人の予想と違った。
「食べたいものは、もう、諦めてるから、病院食でいいんですけど……あのね、一人でお食事したくなくって……」
「……食事するのを、見てて欲しいのか?それとも、一緒に食いたいのか?……なんなら、食わせてやろうか?」
言ってて、だんだん笑えてきた。
どうやら、妻は、珍しく甘えているらしい。
要人は愉悦に浸って、妻を眺めた。
少女のように頬を染め、恥じらいつつも、佐那子はうなずいた。
「ごめんなさい。家族にも、原さんにも、迷惑かけちゃうかな。」
「いや。かまわんだろ。家のことは、まあ、義人が何とかするだろ。」
安請け合いした要人に、佐那子はホッとした。
大腸に癌があるとは言え、ごく初期段階のため、まったく自覚症状のない佐那子は、本気で恐縮していた。
「ステージ4の癌が重病じゃないわけないだろう。」
そう言って、要人は荷物を引き受けながらも、佐那子の手を取りエスコートまで試みた。
「……ありがとう。」
佐那子の頬が緩んだ。
何だかんだ言ってもうれしそうな佐那子を見て、要人もまた微笑んだ。
「ずっと付き添うのは難しいが、毎日来るようにするから。欲しいものがあれば、他の者ではなく、私に言いなさい。」
「……え……大丈夫?」
さすがに、佐那子は驚いた。
送迎も買物も、秘書の原や芦沢、運転手の井上に頼むのが常だったし、前回の入院時もそうしてきた。
忙しい要人に、雑用を頼むことなんてできるわけがない。
要人には、なるべく迷惑をかけないよう、家の事で煩わせないようにしてきた佐那子は、困惑した。
しかし要人は当然のようにうなずいた。
「遠慮はしなくていい。何でも言いなさい。」
「……はぁい。じゃあ……毎日、まいらとイザヤの写真撮って来てくれる?」
佐那子の望みは、要人の意表を突いた。
孫とペットの鳥の写真を……俺が、自分のスマホで撮影するのか?
これまで全くやってこなかったことを求められ、要人は一瞬たじろいだが、佐那子の期待できらきらした瞳に負けた。
「わかった。毎朝、撮ってくるとしよう。……他には、ないか?食べたいものとか……。」
しかし、この問いかけに対する佐那子の返答もまた、要人の予想と違った。
「食べたいものは、もう、諦めてるから、病院食でいいんですけど……あのね、一人でお食事したくなくって……」
「……食事するのを、見てて欲しいのか?それとも、一緒に食いたいのか?……なんなら、食わせてやろうか?」
言ってて、だんだん笑えてきた。
どうやら、妻は、珍しく甘えているらしい。
要人は愉悦に浸って、妻を眺めた。
少女のように頬を染め、恥じらいつつも、佐那子はうなずいた。
「ごめんなさい。家族にも、原さんにも、迷惑かけちゃうかな。」
「いや。かまわんだろ。家のことは、まあ、義人が何とかするだろ。」
安請け合いした要人に、佐那子はホッとした。