いつも、雨
いや。

息子の義人が、残念ながら要人の思いとは違う経営方針を想定していることが歯がゆくてならない今、原の存在はかつてより大きいかもしれない。


「……こんな時に、なんだが……いや、こんな時だから、敢えて言わせてもらうが……十文字の至信(しのぶ)くんと、そろそろ逢ってやればどうだ。……自分の人生だけじゃなくて、まわりの人間にも、いつ何があるかわからんから、あとで悔やまんように、やりたいことと、やるべきことは、強引にやったほうがいい……と、競輪の泉しょーりくんが言ってたぞ。」



突然、何を言い出すのかと思ったら……。


いつも冷静な原の眉毛がピクリと動いた。

「……社長は、本当に……泉選手をかってらっしゃるのですね。」


敢えて、血を分けた我が子のことはスルーした。


……ただ、じゃじゃ馬女と制作過程を共有しただけで、認知もしていない、つまり他人、という認識でしかない。

そこに愛情がない限り、彼女と子供がどこでどうなろうと関係ない……はずなのだが……何だかんだで、会社ぐるみの付き合いもあり、全くの無関係というわけにもいかない。

あまつさえ、まいらと至信は、学校も同じ、クラスも同じだ。

原は、我が子に逢ったことはなくても、義人や要人、佐那子はまいらの学校行事のたびに、至信が原に似ていることを再認識する。

原が無視し続けても、状況的に他人と割り切れるものではない。


……しかも、至信の母親である十文字さやかとは……年に数える程ではあるが、関係も継続している。

そのことは、もちろん竹原家の面々には内緒の話だが、なんせ、さやかがわかりやすくデレるので、隠し切れていない。

癖の強い女だが、原に対してだけは一途なので、要人としても不憫さを感じ始めているのかもしれない。


……何より、要人自身が、泉との付き合いを通して、認知もさせてもらえなかった娘の百合子との交流を果たしていることも大きい。


幾つになっても、血のつながりがある限り、親子は親子ということか。


原は、いつまでも愁眉を解かない要人に、……あからさまにため息をついて見せ、それから渋々言った。

「十文字社長ではなく、ご子息が要求されるなら、面会の拒否はできませんね。」

「……認知も、してやればいいのに。」

「中途半端な入れ墨背負った半端者が父親じゃあ、迷惑でしかありませんよ。」


要人には、原の拗ねた口ぶりがかわいく思えた。
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