いつも、雨
「おはよう。まいら。わざわざそのために早起きしてくれたのかい?ありがとう。おばあちゃんも、喜ぶよ。」

要人の目尻が下がった。


「うん!はい。イザヤ。おとなしくしててね。はい!」

まいらは、手の中のイザヤを要人に見せて、笑顔を見せた。

慌てて要人はスマホのカメラを立ち上げて撮影した。

今日の任務は完了したようだ。


「ありがとう。……そうだ。まいら。お庭のお花が欲しいんだが、今は何の花が咲いているかわかるか?」

要人の問いかけに、まいらはイザヤを手の中から解き放ってから、うなずいた。

イザヤは、まいらの頭上をぐるっと回って飛んでから、まいらの肩にちょこんとおさまった。


「うん。水仙がきれいやで。あと、彼岸桜も咲いてた。」

「……もう、桜が咲くか……。早いもんだな。」


要人は、去来する懐かしい記憶を封印して、剪定鋏を持って庭へと出た。


まいらも、当たり前のようについてきた。


「……鳥、逃げんか?」

要人が心配してそう尋ねたが、まいらはいたって呑気に

「逃げへんよー。イザヤ、めっちゃ、馴れてるもん。呼んだら来るもん。ねー。」

と、鳥のイザヤに確認をとった。


もちろん、イザヤには、通用しない。


要人が彼岸桜の枝を5本程切り落としたあと、鮮やかな黄色の水仙をザクザク切って束ねた、ちょうどその時。

鳥のイザヤは、パタパタと大きく羽ばたいて、まいらの肩から飛び立った。


「あ!だめ!イザヤ!イザヤ!こっち!イザヤ!」

慌てて、まいらが鳥を呼んだ。


しかし、鳥のイザヤは、まいらも要人も一顧だにせず、上空へと舞い上がり、楽しそうに大きく旋回して飛び回っている。


「イザヤー!おりといでー!イザヤー!」

「おーい!イザヤ!戻っておいで。」

必死で呼ぶまいらが不憫で、要人も鳥の名を呼んだ。


しかし、イザヤは、パタパタと飛び続け……竹原家の大きな庭を超えて、川向こうまで飛んで行ってしまった。


室内でしか飛ばしたことのなかったまいらは、愛鳥がそんなに遠くまで飛べるとは思わず……呆然として固まってしまった。



……これは、まずいぞ。

まいらの大切なセキセイインコを、逃がしてしまった……。


とにかく、追いかけるか。

川向こうまで行くには、かなり遠回りして橋を渡るか、ボートで渡るか……。


何十年ぶりではあるが、ボートが早いだろう。
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