いつも、雨
佐那子はふるふると首を横に振って、涙を浮かべた。

「そうじゃなくて……私のために、お庭のお花を持ってきて下さったことがうれしいんです。」


それで、充分だった。


要人は佐那子を抱き寄せて、背中を撫でた。


花を活ける花瓶もまた、佐那子のお気に入りの花入れを持って来た。

桟切りがイイ景色を見せる備前焼の手桶花入。

水を入れてやると、佐那子は早速、花合羽を開いて、彼岸桜と黄水仙を活けた。


それから、2人で義人のサンドイッチを食べた。

水筒にはレモンティーが入っていた。



「では、また昼に来るとしよう。今日は、検査があるのだろう?……がんばれ。」

「はぁい。いってらっしゃい。」


ひらひらと、手を振って、要人を見送った。

その後で、気づいた。


……写真、見せてもらい忘れたわ。

イザヤの最後の写真になっちゃったのねえ。


そうだわ。

その写真で、探せばいいんだわ。


早く見つかるといいんだけど。



3月とは言え、夜は寒い。


……やだ……そういえば、さっき天気予報で、これから雨が降るって言ってたわ。

イザヤ、大丈夫かしら。

かわいそうに……。


……まいらも、泣いてるでしょうね……。


せっかくあんなにかわいがっていたのに。

見つかるかしら。




窓の外に目を向けると、心なしか、どんよりしてきたようだ。

さっきまで、青空だったのに。


……イザヤ……無事でいて……。





9時過ぎから、明後日の手術に向けての詳細な検査が始まった。

あちこち回って、麻酔医や薬剤師、技師の説明をいっぱい聞いて、また検査を受けて……気づいたら、とっくにお昼を過ぎてしまっていた。


病室に戻ると、既に要人が重箱を広げて待ち構えていた。


「ごめんなさい。お忙しいのに、お待たせして。」

「なに、かまわんよ。……それより、顔色が悪いぞ。しんどいんじゃないか?」


要人に指摘され、初めて、佐那子は不調を意識した。


「……ちょっと……しんどいかも……確かに……」

「いかんな。横になりなさい。昼からは、ゆっくりできるのか?」


要人に力強く支えられ、佐那子はふらつきながらベッドに倒れ込んだ。


「……ん。お風呂に入るぐらいかな。……大丈夫。少し休んだら……。」


言ってる間に、佐那子のまぶたが落ちた。



……眠いのか……?

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