いつも、雨
要人が会社に戻る頃、雨が降り出した。


秘書の原は、要人の遅延の文句を言わないかわりに、代理を務めた義人をほめちぎった。


「……それはそうと、警察から連絡はあったのか?鳥は、見つかったか?」

義人は、息子の話題を避けた。


原は、眉をひそめてから、表情を消し、淡々と報告した。

「青い鳥ということで、昨日から保護している鳥はいるそうですが、今朝から行方不明ということですので、別の鳥ですね。……念のため、観に来てほしい、可能なら預ってほしいということでした。」

「何だ、それ。押し付けたいだけじゃないか。」


呆れてそう言うと、原は恭しくうなずいた。


「そのようですね。義人さんは、預るのはかまわないが、持ち主が現れてお返しする時に、まいらさんが、また淋しい想いを重ねるのはないかと懸念されているようでした。」

「当たり前だ。それなら、別の鳥をまた買ったほうがマシだ。」

「……義人さんも、同じことを仰ってました。」


むすっと黙り込んだ要人に、原はそれ以上何も言わなかった。




窓の外は、雨が降っていた。

3月とは言え、冷たい雨だ。

あの小さな青いセキセイインコは、ちゃんとどこかで雨宿りしているのだろうか。


まいらは……泣いてないだろうか……。


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その夜。

佐那子の病室で食事を済ませてから帰宅すると、案の定というか、家の中は騒然としていた。


学校から帰ってくると、まいらはあちこちを歩き回り、逃げた鳥を探したらしい。

敷地外に一人で行かせるわけにいかず母親の希和子がずっとついて回った。



しかし、暗くなってから帰宅したときには、既に希和子は熱を出してしまっていたようだ。



……合羽を着ていたとはいえ、雨に打たれて、山や林を歩き回れば、もともとあまり体力のない希和子の体には、そりゃあ堪えただろう。



希和子の不調を目の当たりにして、まいらは、幼いながらも、胸を痛めたらしい。


これ以上イザヤに執着して探し回ることは、ワガママだと思い込んだようだ。


「ごめんなさい!もう、いい!もう、いいから!ごめんなさいっ!」



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