いつも、雨
希和子が先に寝室に入ってからも、まいらは空っぽの鳥かごを抱えて泣いていた。

義人が警察も探してくれているからと嘘をつき、宥めすかして、ようやくまいらは眠った。




「……かわいそうだから、明日はお前がついて探してやればどうだ?」

思わず要人は、義人にそう提案していた。


……どうせろくな仕事もしてないんだから……という言葉は、さすがに控えた。

息子の展望が気に入らなくて、敢えて仕事をさせてないのは自分だ。


もちろん言わなくても、義人には通じてしまう。


「わかりました。明日も学校は昼までなので、俺も早退させていただきます。」

従容とそう言った義人は、少し淋しそうだった。


「春休みまでには見つかるといいな。」


……でないと、まいらは朝から晩まで鳥を探してさまようかもしれない。

観光シーズンに入り、家の周囲には道に迷い込んだ観光客もたくさんいて、とても、治安がいいとは言えない。



「そうですね。お母さんの退院までに戻ってこないと……また、別の鳥を買ってきはりそうですね。」


義人の言葉に、要人は苦笑いするしかなかった。


十中八九そうなるだろう。

もちろん、まいらの気は、それで晴れるかもしれない。


しかし逃げてしまったあの青い鳥は……どうなってしまうのだろう……。


やりきれない思いで、要人は両手のひらの傷を見た。

どこも既に血はとまっているように見えた。


……この手で……領子さまに触れても、嫌がられないだろうか……。


領子さま……。



今日はもう連れ出すことは不可能だったとは言え、このまま放置するわけにはいかない。

絶対に明日は逢わなければいけない。

領子の予定はもちろん熟知している。

急用か、体調を崩されない限り、明日の午前中は茶会に赴かれるはずだから、その帰りを狙うつもりだった。



「明日は、晴れるといいな。」

要人のつぶやきに、義人も心から同意した。







翌朝も要人は、義人の作った朝食のバケットサンドを携えて、佐那子の病室を訪ねた。

「うーん、おいしい。……私が帰宅してからも、義人にお料理してもらおっか。くやしいけど、私より全然上手。」

佐那子は、堅いバケットにかじり付いて唸った。


要人は敢えてスルーして、佐那子の枕元に貼られた「絶食」の文字を見つめた。
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