いつも、雨
勝手にこみ上げてきた涙をまばたきで追い払って、領子は要人の胸に頬ずりした。

「うれしいわ。ええ。わたくしも、無理だと思います。たぶん耐えかねて苦しくて淋しくて……わたくしがお願いしたのに、見当違いに逆恨みしてしまうかもしれません。でも、それでも、今は、佐那子さまのそばにいてさし上げてください。お願い。」



言い出したら聞かない、いつもの頑固モードになってしまった領子に、要人はため息をついた。


今は、何を言ってもダメだろう。

仕方ない。



「わかりました。……でも領子さまは、我慢しなくていいんですよ。会いたくなったら、仰ってください。何とでもいたしますから。」


よしよしと、頭を撫でながらそう言ってみたけれど、領子は頑なに口をへの字に結び、静かに泣いていた。



愛しい……。

ただ、ただ、愛しい……。

宝物のようなこの時間が、少しでもながく続いてほしくて……。




「雨がやんだら、ここから、独りで帰りますわ。送らないでください。」

バスローブを素早く羽織って、領子はそう言った。



「……午後にはやむと聞いていましたが……まだ降っていますか。……こんな長雨を、鳥は、どうやり過ごすのかな。」

要人もまたベッドから降りると、裸のまま、窓際に行き、カーテンを開けた。


「うん。雨ですね。西の空は少し明るく見えるのですが……もう少し降り続きそうですよ。」


「……もう少し……。」


いつの間にか、背後から領子がしがみいてきた。


帰る帰ると口では言ってても、やはり離れがたい。

もちろんそれは要人も同じで……



「迷子の鳥にはかわいそうだが、……このまま、雨が降り続けてほしいと思いますよ。」

ついそんなことを言ってしまった。


「……ダメよ。そんなの。ちゃんと、雨があがったら帰ります。……だから……雨がやむまで……こうしていて、いい?」

領子は、少女の頃のように甘えていた。



今、解き放ったばかりの性欲が、再びむくむくと膨らんだ。

要人はくるっと振り返ると、勢いよく領子を抱き上げた。


「きゃっ」

小さな声を挙げて、領子は慌てて要人の首に腕を回した。


要人は、領子の唇を舌で割って蹂躙した。


キスの激しさと対照的に、そーっと優しく領子をベッドに寝かせる。


「……雨がやむまで……こうしていましょう。」


要人の提案に、領子はコクリと頷いた。

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