いつも、雨
佐那子は、10日後に退院した。
食事も、特別消化の悪いモノや、ワカメなど、縫合した箇所に引っかかりそうなモノ以外なら何でも食べていいとお墨付きをもらった。
身体の中から大きなナマコ大の器官を摘出したにしては、普通に元気だ。
佐那子が自宅に帰り着くと、ぱたぱたヨロヨロと、青い小さな鳥が出迎えた。
預かった保護鳥だ。
いつ本物の持ち主が現れるかわからないので、名前はつけなかった。
しかし世話をしているまいらは、ついつい「イザヤ」と、逃げた鳥の名前で呼んでしまい……結局、この子も「イザヤ」となった。
もっとも、イザヤ1号はブルーバイオレットの雄で、イザヤ2号は明るい水色の雌だった。
「なんか、うちに来た時より、ちゃんと飛ぶようになった気がする。……また、羽根、切ったほうがいいねえ。」
イザヤ1号が逃げてしまったことは、すっかりまいらのトラウマになってしまったようだ。
「鳥なんだから、これぐらい飛べたほうが、ストレスがないんじゃないか?」
一応そう進言はしてみたが、馬耳東風のようだ。
まいらは、佐那子に頼んで、鳥の風切り羽を切ってもらった。
ふたたびイザヤ2号は、一生懸命羽ばたいても、浮き上がるのがやっとになってしまった。
……確かに飛べない鳥さんは……かわいそうだけど……かわいいわね……。
4月、新学年を迎え、まいらが学校に通い始めると、鳥は佐那子と過ごすことが増えた。
孫の愛鳥を万が一にも逃がさないよう、佐那子は鳥かごごとイザヤを庭へ連れ出し、共に日光浴やお花見を楽しんだ。
桜が散り、新緑が美しく萌えた頃、佐那子の抗癌剤治療が始まった。
再発の抑制に効果が高いという薬を、一週間に1度点滴する。
6週間続けて、2週間休み、また週1度の点滴を6週間。
このサイクルを3度繰り返すそうだ。
「つまり半年よね。……これが、半年続くの?……そのうち、身体、慣れるかしら……。」
初めての投与の後、佐那子はあまりの苦しさに嘔吐し、帰宅することができず、一泊入院して身体の落ち着くのを待つことになってしまった。
予想以上に、佐那子の身体は悲鳴をあげた。
とても半年続く抗癌剤治療に、耐えられそうにない……と、本人もすっかり弱気になってしまった。