いつも、雨
「ありがとう。」

「……大丈夫やって。羽根、切ってるし、そんな飛べへんもん。雨やし……」



ごきゅごきゅと喉を鳴らして、佐那子はポカリスエットを飲み始めた。


まいらは、母の指示に口をとがらせながら、再び掃き出し窓に近づいた。

まるでまいらを先導するように、トコトコと鳥のイザヤが歩いていた。



「イザヤ。おいで。」

まいらがイザヤに追いついて、手を差し出した、その時だった。


サッと、風が吹きこんできたかのように、黒いモノが室内に飛び込んできた。


そして、まいらの指先のすぐそばにいた青い鳥が、横から攫われてしまった。


猫だ。


庭のほうから、野良猫か、どこかの猫が入ってきて、鳥を咥えて逃げて行ってしまった。



それは、一瞬の出来事だった。



佐那子も、希和子も、何も見ていなかった。


まいらの悲鳴と、鳥の断末魔の小さな

「ぴ……」

という鳴き声は、ほぼ同時だった。





「え?なに?どうしたの?」

火のついたような娘の泣き声に驚いて、希和子が尋ねた。



ポカリスエット1リットルを無理やり飲みこんだ佐那子も、突然の孫の叫び声に目を丸くしている。




まいらは、ぽろぽろと涙をこぼした。

「イザヤが!猫が!食べた!イザヤが!食べられたーーー!」



泣きじゃくりながら、まいらは庭に駆け出た。




既に、猫の姿はどこにもなかった。


ただ、土の上に、青い小さな羽根がいくつも落ちていた。

よく見ると、落ちた羽根の一部には赤い血が付着している。


まいらは大きな声をあげて泣いた。


こんなことになるなんて、想像もしなかった。

ただ、羽根を切ってさえいれば、鳥は逃げられないし、すぐに捕まえられるし、安全だと思っていた。


……でも……まいらだけじゃなくて……外敵もまた、イザヤをすぐに捕まえられるということには、考えも及ばなかった……。


いや、それどころか。

そもそも、鳥に害をなす存在なんて、知らなかった。

猫がセキセイインコを傷つけるなんて……。





「猫って……お庭に入り込んでたかしら……」

「たまぁに子猫とか、観た気もするけど……餌もやってないのに……鳥がいることを知って、ねらってたのかしら……。いたた……。」

「お母さん!やっぱり救急車呼びましょう!まいら!まいら!戻ってきて!おばあちゃん、痛いって!」


母の希和子の声に、まいらは涙を袖でぐしぐしと拭って、部屋へと戻った。
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