いつも、雨
真っ青な顔で青息吐息の祖母が心配で、今はイザヤのことをこれ以上騒ぐことはとてもできそうになかった。


「電話してくる!救急車と原さん!」

まいらはそう言って、家の中へと走った。


泣いてる場合じゃなかった。


大好きなおばあちゃんの方が大切に決まってる。


そりゃあ鳥のイザヤはかわいそうだし、猫は憎くて憎くてしかたないけれど……私が、不注意だったんだ……。



私が悪いんだ。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい。


まいらは心の中で何度も何度も何度も、イザヤ2号に謝った。




119と電話のボタンを押すときも、秘書の原に電話するときも、涙も鼻水も止まらなかったけれど、必死で訴えた。

おばあちゃんを助けて!と。



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佐那子は、そのまま入院した。

希和子の気づいた通り、脱水症状だった。

飲み干したポカリと点滴ですぐに症状は落ち着いた……が、あまりにも痩せ細り過ぎたため、そのまま入院し点滴を続けることとなった。




「……抗癌剤治療……やめてもいいかな?」

慌てて駆け付けた要人に、佐那子はそう尋ねた。



すぐに返事できることではなかった。


再発を防ぐための治療を中断するということは、次の癌の発生が早まる可能性が高くなる、ということか。


しかし、確かに今のように、倒れるほどに苦しみ続けている治療を続行することに、はたして意味があるのだろうか。



要人は無言で、佐那子の手を取った。


弱々しく握り返してくる白い手の冷たさに、ゾクッとした。



……本末転倒だったかもしれない……。


1日でも長生きしてほしいというのは、家族のエゴでしかなかったのだろうか。

患者本人にとっては、身体を過度に痛めつけ、老化させる治療をするより、穏やかな時間をゆったり過ごすほうが幸せじゃないだろうか。




要人は、ため息をついて、そして佐那子の額に、やつれた頬に触れ、それからやっと頷いた。



「……ありがとう……。」

佐那子は、心からほっとしたようだ。


ようやく笑顔を見せると、それから、要人の少し後ろに立っていた息子の義人と娘の由未に

「ごめんね。」

と、つぶやいた。



由未はボロボロと涙をこぼして、ぶんぶん首を横に振った。


夫の恭匡が力強く由未の両肩を支えた。
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