いつも、雨
勤め先の会社の名刺を持って挨拶した桜子が、あまりにもかわいらしく、愛しくて……要人は、衝動的に自慢の孫だと周囲にふれ周りたくなった。
とりあえずその場は名刺交換のみで我慢はしたものの、……もはやこれまでのように遠くから見守るだけではおさまらない。
当たり前のように、要人は桜子を自分の会社に引き抜くことを考えた。
しかし、桜子は、勤め先の会社で、ただの一社員ではなかった。
現在の所属は秘書室とのことだが、ゆくゆくはその会社を継ぐ社長子息との結婚が決まっている。
つまり、社長は未来の舅というわけだ。
それだけ聞くと、個人経営の小さな会社のようだが、詳しい業績を見ると、もともと小さくもない老舗の貿易会社がこの十年で飛躍的に業績を伸ばしていた。
破竹の勢いは、要人の創業期の頃のようだ。
社長は、要人の息子の義人と大学、大学院と同じゼミだった優秀な男だ。
しかし会社を大きくしたのは、社長の妻の手腕だという。
夫人は、娘の由未の高校時代の友人で、その頃から「天才」だとは聞いていた。
なるほど。
優秀な男が、天才の妻と二人でゲームのように利益を上げているということか。
息子の義人は、おそらく、会社を縮小するための売却先の候補の一つとして、この友人の会社を考えているのだろう。
自分の目の黒いうちは、そんなことは絶対させない。
しかし……その会社に桜子がいるというなら、話は別だ。
まして、桜子は、ゆくゆくはその会社の社長と結婚する。
言わば、桜子の会社ということではないか。
ならば、いっそ、要人の築いたグループ会社も、桜子に託すことも可能ではなかろうか。
要人は、すっかり浮かれていた。
冷静な判断力を失い、気に入らない実子の義人を通り越して、その娘の桜子に全てを譲るという考えに満足し、酔いしれた。
それが義人の描いた青写真であることは完全に無視して、要人は桜子を会社に、そして家族として迎え入れることを計画し始めた。
*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――
このあたりの人間関係は拙著
「小夜啼鳥が愛を詠う」で補完くださいませ。
https://www.berrys-cafe.jp/pc/book/n1295109/
「なくした逸聞」の「野木さん、結婚する」に、要人と桜子の再会、義人と桜子の出逢いがあります。
ご参考までに……
https://www.berrys-cafe.jp/pc/book/n1295109/316/
とりあえずその場は名刺交換のみで我慢はしたものの、……もはやこれまでのように遠くから見守るだけではおさまらない。
当たり前のように、要人は桜子を自分の会社に引き抜くことを考えた。
しかし、桜子は、勤め先の会社で、ただの一社員ではなかった。
現在の所属は秘書室とのことだが、ゆくゆくはその会社を継ぐ社長子息との結婚が決まっている。
つまり、社長は未来の舅というわけだ。
それだけ聞くと、個人経営の小さな会社のようだが、詳しい業績を見ると、もともと小さくもない老舗の貿易会社がこの十年で飛躍的に業績を伸ばしていた。
破竹の勢いは、要人の創業期の頃のようだ。
社長は、要人の息子の義人と大学、大学院と同じゼミだった優秀な男だ。
しかし会社を大きくしたのは、社長の妻の手腕だという。
夫人は、娘の由未の高校時代の友人で、その頃から「天才」だとは聞いていた。
なるほど。
優秀な男が、天才の妻と二人でゲームのように利益を上げているということか。
息子の義人は、おそらく、会社を縮小するための売却先の候補の一つとして、この友人の会社を考えているのだろう。
自分の目の黒いうちは、そんなことは絶対させない。
しかし……その会社に桜子がいるというなら、話は別だ。
まして、桜子は、ゆくゆくはその会社の社長と結婚する。
言わば、桜子の会社ということではないか。
ならば、いっそ、要人の築いたグループ会社も、桜子に託すことも可能ではなかろうか。
要人は、すっかり浮かれていた。
冷静な判断力を失い、気に入らない実子の義人を通り越して、その娘の桜子に全てを譲るという考えに満足し、酔いしれた。
それが義人の描いた青写真であることは完全に無視して、要人は桜子を会社に、そして家族として迎え入れることを計画し始めた。
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このあたりの人間関係は拙著
「小夜啼鳥が愛を詠う」で補完くださいませ。
https://www.berrys-cafe.jp/pc/book/n1295109/
「なくした逸聞」の「野木さん、結婚する」に、要人と桜子の再会、義人と桜子の出逢いがあります。
ご参考までに……
https://www.berrys-cafe.jp/pc/book/n1295109/316/