いつも、雨
薫からは、ギラギラしたオーラが常に発光しているようなパワーを感じた。


ああ、そうだ。

外見は彼の父親に、似てるんだな。

目の前の青年のほうが、やんちゃで、ギラギラしているが……うん、似てる。



声をかけてみると、薫は、軍隊のようにしゃきーんと背筋を張って、身体を直角に折るように頭を下げて、またビシッと直り、声を張って挨拶した。

「はい!小門薫です。はじめてお目にかかります!ご挨拶が遅れましたが、先月、桜子さんと結婚させていただきました。今後よろしくお願いします。」


一連の動作があまりにも体育会系で、要人の頬が勝手に緩んだ。


「ふむ……。頼もしい好青年じゃないか。桜子。」


桜子の頬が不自然に引きつるのと対照的に、薫がうれしそうな明るい笑顔を見せた。


「ありがとうございます!でも、ずっとサッカーしかしてこなかったサッカー馬鹿なんです、俺。これから、貪欲にいろんなことに挑戦して、本当に、頼もしい男になれるよう頑張ります。できたら、おじいちゃんにも、厳しく指導してもらえたら勉強になります。」



……おじいちゃん……。



予想していなかった、うれしい響きだった。



おじいちゃん……。

そうか。

婿殿は、俺を「おじいちゃん」と呼んでくれるのか。


……では、桜子も……?



期待を込めて、孫娘をじっと見た。


桜子は、明らかにたじろぎ、身構え、後ずさりした。


その肩を、そっと薫の手が掴んだ。

柔らかい上品なベージュのような色合いの色留袖をはんなりと着こなしたなで肩に、日焼けした大きく骨張った手がよく映えた。



桜子は、薫に力をもらったのか、しっかりと要人を見据えて、口を開いた。

「主人ともども、孫だと思って甘やかさず、厳しめにご指導していただけたら、うれしいです。……おじい……ちゃ、ま。」


今の桜子の精一杯の譲歩だった。



……なるほど。

なるほどな……。


5歳の年の差があるとは言っても、婿殿はちゃんと桜子の主人のようだ。


その影響力……いや、支配力を目の当たりにして、要人はにんまりと笑ってしまい、それから慌てて表情を引き締めた。


ならば、簡単なことだ。

将を射んと欲すればまず馬を射よ。


神戸で章と光が言っていた通り、婿殿は物怖じしない、人懐っこさを俺に向けている。

よし。



要人は、唐突に言った。

「あー、薫くん。社会勉強に、アルバイトしてみないか?」
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