いつも、雨
薫が会社にも顔を出せば、桜子は今のように萎縮することがなくなるのではないだろうか。
突然の申し出に、薫は即答はしなかった。
「ありがとうございます。大学が始まって、時間割が決まったら、是非お願いします。……ただ、一回生の間は、講義が詰まってるらしいので、来年になるかもしれません。」
……ほう。
前向きな反応を見せながらも、考えなしにその場凌ぎの返事をして要人の言いなりにはならない。
意外と喰えない薫に、要人はますます好印象を覚えた。
そのままゆっくり話がしたいところだったが、賓客の来園に秘書の原が要人を呼びに来た。
一旦桜子たちと別れて、要人は挨拶へと向かった。
残された桜子と薫は、美味しいお料理と美しい桜に酔いしれた。
ひととおりの客人たちへの挨拶まわりがあらかた済んだころ、要人は園内を見下ろせる四阿(あずまや)で、お抹茶を飲んで休息した。
秘書の原が、珍しく楽しそうな表情で要人に言った。
「芦沢から聞いたのですが……桜子さんの旦那様が、社長のことを好きだと言ってらしたそうですよ。社長のカリスマオーラにひれ伏したくなった、そうです。」
くすり……と思い出し笑いまでした原に、要人はさもありなんとうなずいて見せた。
「あれは、大物になりそうだな。……私も、彼のパワーに圧倒されそうになったよ。……桜子は、イイ男を選んだな。」
満足そうに何度もうなずきながらそう言った要人を、原はじっと観察した。
どうやら、本当に、あの小門(こかど)薫なる学生を、自分の後継者に育てるつもりになったらしい。
……義人の思惑通りにことは進んでいる……とは言え……生まれる前から見守っていた義人が、後継者になれずに終わってしまうというのは……何とも、つらい……。
「さて。……桜子たちは、一通り楽しんだかな?落ち着いたなら、そろそろ、家のほうに案内してやってくれるか?」
要人の言葉が終わるのを待ってから、原は野点エリアに目を向けた。
「……先ほど、あちらの床几に由未さんと並んで座ってらっしゃったので、……たぶん由未さんがお連れしてくださると思っているのですが……それでは、行って参ります。」
「あ、いや、そらなら、いい。君が行くと、桜子が会社モードに戻ってしまうかもしれない。由未に任せるとしよう。……それはそうと……十文字の至信(しのぶ)くんには挨拶できたのか?」
原の表情が固まった。
突然の申し出に、薫は即答はしなかった。
「ありがとうございます。大学が始まって、時間割が決まったら、是非お願いします。……ただ、一回生の間は、講義が詰まってるらしいので、来年になるかもしれません。」
……ほう。
前向きな反応を見せながらも、考えなしにその場凌ぎの返事をして要人の言いなりにはならない。
意外と喰えない薫に、要人はますます好印象を覚えた。
そのままゆっくり話がしたいところだったが、賓客の来園に秘書の原が要人を呼びに来た。
一旦桜子たちと別れて、要人は挨拶へと向かった。
残された桜子と薫は、美味しいお料理と美しい桜に酔いしれた。
ひととおりの客人たちへの挨拶まわりがあらかた済んだころ、要人は園内を見下ろせる四阿(あずまや)で、お抹茶を飲んで休息した。
秘書の原が、珍しく楽しそうな表情で要人に言った。
「芦沢から聞いたのですが……桜子さんの旦那様が、社長のことを好きだと言ってらしたそうですよ。社長のカリスマオーラにひれ伏したくなった、そうです。」
くすり……と思い出し笑いまでした原に、要人はさもありなんとうなずいて見せた。
「あれは、大物になりそうだな。……私も、彼のパワーに圧倒されそうになったよ。……桜子は、イイ男を選んだな。」
満足そうに何度もうなずきながらそう言った要人を、原はじっと観察した。
どうやら、本当に、あの小門(こかど)薫なる学生を、自分の後継者に育てるつもりになったらしい。
……義人の思惑通りにことは進んでいる……とは言え……生まれる前から見守っていた義人が、後継者になれずに終わってしまうというのは……何とも、つらい……。
「さて。……桜子たちは、一通り楽しんだかな?落ち着いたなら、そろそろ、家のほうに案内してやってくれるか?」
要人の言葉が終わるのを待ってから、原は野点エリアに目を向けた。
「……先ほど、あちらの床几に由未さんと並んで座ってらっしゃったので、……たぶん由未さんがお連れしてくださると思っているのですが……それでは、行って参ります。」
「あ、いや、そらなら、いい。君が行くと、桜子が会社モードに戻ってしまうかもしれない。由未に任せるとしよう。……それはそうと……十文字の至信(しのぶ)くんには挨拶できたのか?」
原の表情が固まった。