いつも、雨
見聞してきた情報を補完して、原は要人に説明した。


9才……6才……。

光と菊乃の関係に対する親近感がいや増し、要人は目を細めた。


「そうか……。しかし、光くんは、なぜ菊乃さんとのことを内緒にしてるのだろうな。……これから、薫くんにも、菊乃さんにも、責められそうだな。かわいそうに。」


やはり年齢差がネックなのか?



原は肩をすくめた。

「それにつきましては、見解が別れてましたね。菊乃お嬢さんは、お家元から、お嬢さんが大人になるまで手を出さないと約束させられているから、18か二十歳(はたち)か……それまでは、ちゃんとした恋人じゃないからだとおっしゃってましたし、咲弥さまは、光さんが歌舞伎の中村如矢(ゆきや)丈と紳士協定を結んでいるからまだお嬢さんを自分のものにできないとおっしゃってました。でも、薫さんは、光さんは重度のマザコンだから実際に結婚話が進むまで母親に紹介することはないだろうとおっしゃってました。」


気をつけてはいても、途中から原は笑いをこらえていた。



ずいぶん赤裸々に話したものだ……。

なるほど、光くんなりのケジメなのかもしれないな。

単に意地を張っているだけかもしれないが、抑止力にしているのだろうか。

……しかも、マザコンだというなら、なおさらだ。



しかし、驚いたな。


「……では、何年もつきあっているのに、ほんとうに、まだ光くんは手を出してないということか。それはそれは。……誠実というか、なんというか……。」


要人は、もはや少女ではない、すっかり美しい女性へと成長している菊乃を思い浮かべて、首をひねった。


よく我慢できるな……。



「……変わってらっしゃいますよね。聞き耳を立てている私も笑いを堪えるのに苦労いたしました。……そう言えば、呼称も変わってらっしゃいますよ。光さんは菊乃お嬢さんを『菊乃さん』とか『菊乃天人(てんにん)』、『わが天人』と呼ばれるそうですが、お嬢さんのほうは『光』と呼び捨てされているようでした。……そういえば、薫さんも、実のお兄さまなのに『光』呼びされてますね。」


もはや、原は半笑いだった。
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