いつも、雨
要人は逆に、しみじみと思い出して、言った。

「薫くんは、3歳のときから桜子のことも光くんのことも呼び捨てにしてたそうだ。5年の年の差を、埋めたかったのだろうよ。その頃から、彼は、背伸びして、小さな手を広げて桜子を守っていたと、佐那子から聞いた。」


だから、桜子が同い年の光ではなく、5才年下の薫と結婚すると聞いて、佐那子はとても喜んでいた。


今なら、わかる。

桜子は、とてもよい選択をした。



「イイ男だな。薫くんは。」



そして、光くんは……やっぱりよくわからんが……それもまた、彼らしいかな。

……いや、本当に、桜子が光くんへの執着を早めに断ち切ってくれて、よかったよかった。


それも……光くんが、そう仕向けてくれたと言ってたか……。

やっぱり、変な子だな……光くん。


……まさか……芳澤の菊乃さんに手を出さない理由は、桜子への未練……じゃあなかろうな?


多少の不安を覚えつつ、要人は視線を彷徨わせた。



閉園時間が迫り、だいぶ人が減っているようだ。



「……社長。そろそろ、お時間です。」

腕時計を見て、原が促した。



「ああ。ではお見送りのご挨拶に行こうか。……やはり、義人がいないと、不自由だな。今年は疲れた。」


要人は、息子の不在を嘆いた。


なんだかんだ不満はあっても、息子の優秀さも社交性も否定はできるものではない。



「……来年からは、義人さんはもちろんですが、桜子さんと薫さんにもご助力していただけるとよろしいですね。」


原の提案に、要人の目尻がでれっと下がった。


客ではなく、身内として……家族としての関係を構築する。


桜子には手こずったが、あの薫くんがいるなら、大丈夫だろう。



要人は機嫌よく立ち上がり、最後のお勤めへと向かった。



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いっぽう、桜子は、由未に連れられ祖母の佐那子との対面を果たしていた。

要人の知らないうちに、桜子は佐那子やまいらとすぐに打ち解けたばかりか、由未の提案で、薫がアルバイトで、まいらの家庭教師をすることになった。


もちろん、薫の学力を見込んで……という話ではない。


桜子を竹原家に招くための方策だ。

月水金の週3回、夕方から薫はまいらの勉強を見るために、大学から直行する。

その日は、桜子もまた、終業後に要人か義人の車で竹原家へ来て、夕食をご馳走になる。

月水の夜は新居のマンションへ帰るが、金曜日はそのまま竹原家にお泊まりすることになるだろう。
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