いつも、雨
帰宅すると、既に義人と希和子も帰っていた。
せっかく着飾った家族が揃っているので、普段着だった佐那子とまいらも着物に着替えて、家族写真を撮影した。
夕食は、お寿司をとって、みんなで食べた。
夜、当たり前のように、義人が車で桜子と薫をマンションまで送ってくれた。
とても持ちきれない……どころか、小さな部屋をひとつ占領してしまいそうなほどのたくさんのお土産を積み込んで。
「……疎遠な親戚の1人……ぐらいになれるかな……って想ってたんですが……みなさん、優しくって……。」
成り行きにまだついていけない桜子の言葉を、薫が引き取り、運転席の義人に尋ねた。
「もうすっかりファミリー?って思って、ええの?」
義人は前方を見たまま、うれしそうに目を細めた。
「ああ。そうみたいやな。……正直、俺も、最初っから、ここまで上手くいくと思わんかったわ。お母さんはともかく。……薫くん、ずいぶん社長に気に入られてんてなあ。原さんもびっくりしてたわ。」
薫は目を丸くした。
「ほんま!?え?ほんま?」
「ほんまほんま。まいらの家庭教師もありがたいけど、早々に会社のほうにも引っ張られるんちゃうか?……これで、やっと、社長も肩の荷がおろせはるようになるんやったらいいなあ。」
……実の親子なのに……本来、義人こそが後継者のはずなのに……まるで他人事のように、義人はそう言った。
要人と義人の葛藤を知らない薫には、そのあたりのニュアンスは伝わらない。
「おじいちゃん、70才過ぎてるんやもんなあ。義人さん、いよいよ社長就任しよるんやな。ほな、桜子は、義人さんの秘書になるんやな。……俺は、おじいちゃんの雑用係にしてもらおうっと。」
のん気にそんなことを言った薫を、桜子はマジマジと見て、首を傾げた。
義人もまた、肩をすくめたが……薫の勘違いを是正するのはやめた。
突然、この大きな会社の後継者として帝王教育を受けろ……なんて言われたら……さすがに薫でも、たじろぐかもしれない。
変にプレッシャーを与えないほうがよかろう。
「……1日も早く、会社で逢える日を、楽しみにしているよ。」
義人はそれだけ言って口をつぐんだが、知らず知らずのうちに、また頬が緩むのを止めることはできなかった。
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翌日から、薫は忙しくなった。