いつも、雨
「……まあ、光みたいな、ガチ不思議ちゃんな兄を持つと、な。……空想とか、夢見る夢子ちゃんとか、そんなレベルちゃうし。……ほら、寺で幽霊と逢ったりとか?実は異世界体験してたりとか?……他人からは荒唐無稽な空想にしか思われへんでも、本人は実際に体験してるから、その分、成長したり変化するんちゃうかな、って。」


残念ながら、薫の言いたいことの意味合いを完全に理解することは、佐那子にも、桜子にもできなかった。


しかし、まいらには伝わったようだ。

思い当たる事象があったのかもしれない。


「そっかあ……。薫くんが優しいのは、光くんで慣れてるからなんや。」

しみじみと、まいらがつぶやいた。


「まいらちゃん、そんなに、不思議体験するの?もしかして、霊感強いの?」

桜子にそう聞かれて、まいらは首を傾げた。

「よくわかんない。けど、見たこと、聞いたことを、誰彼かまわず、そのまましゃべることはやめたほうがいい、と、孝義くんに教えてもろた。孝義くんもそうしてきたから。せやし孝義くんにはしゃべっていいねん。……でも……今は、あかんから。……言えへん。」

「今は、って?なんかあるん?」

「……わからんけど。……奥さん……もう……。」


ざわざわと不穏な空気に変わった。


……なるほど。

よくわからないけれど、確かに、普段は感じない不思議な感覚を桜子は感じた。


「……まだお若いのに……。」

佐那子のつぶやきも、また、不安を煽った。


もう若くない自分なら、いつ死んでもいいと……そう言っているようだ……。



死なないで……。

やっと、こうして、お会いできたのに……。


桜子は、言葉にできない想いをどうすることもできず……そっと佐那子の腕に触れた。


細い……。

こんなに細いんだ……。



ポロリと涙がこぼれた。


「あらあらあら。……さっちゃん、泣いちゃった。……大丈夫よ。泣かないで。」

佐那子が慌てて、桜子の涙をハンカチで拭った。


「……ごめんなさい。」

せっかくの楽しいピクニックで泣いてしまったことを、桜子は詫びたつもりだった。


佐那子は、優しくほほえんだ。

「謝らないで。あのね、さっちゃん。私、幸せよ。家族みんなのおかげで。……生きていて、つらいことも淋しいこともあったけど……今は、本当に幸せなの。こうして、さっちゃんとも逢えて……もう、ね、今、雷に打たれて死んでしまっても、私は幸せって言い切れるわ。だから、ね。ありがとう。さっちゃん。……大好きよ。さっちゃん。まいら。薫くん。」
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