いつも、雨
義人は、肩をすくめて苦笑した。

「つまり、俺とお前は、そのうち親戚になるみたいやな。」

「はあ?」

まだ納得がいかない彩乃は、なおも質問を重ねようとしたが、別の招待客に声をかけられ、余所行きの顔で、そちらへと足を向けた。



義人は愉快そうに笑って……それから、桜子に真顔で言った。

「ごめん。了承なしで、さっちゃんを娘って言うてしもた。薫くんも。ごめんな。」


……今さら謝られても……。


「て、確信犯やん。そのつもりで俺らを連れてきよったんやろ?」


呆れ顔の薫の言葉に、桜子もうなずいた。


義人はニコッと笑顔になった。

「うん、まあ、そうやな。……この後、いろんな人に声かけられるやろけど、めんどくさかったら、会場出て光くんといたらいいわ。」


すぐそばに、いかにもそれなりの立場っぽいおじさんが近づいてきて、義人に挨拶をした。



桜子と薫は、それを機に義人のそばを離れた。


……なるほど……周囲の視線が……自分たちに注がれていることに初めて気づいた。


緊張する桜子の手を取り、薫は人垣をものともせず、まっすぐ突っ切った。


そして、やはり挨拶に回っている菊乃に声をかけた。

「菊乃ー!おーい!菊乃ー!」


大きな会場でたくさんの人たちが談笑しているとは言え、大声を出せば目立つ。

薫は、また新たな注目を集めた。


呼ばれた菊乃は薫を見て、ギョッとしたようだ。

「ちょ、やめてーや。しいっ。何であんたがここにいるん?」


見るからに大和撫子な美女の菊乃のフランクな口調に、桜子は驚いた。

顔と言葉が一致していない……。


「何でって。舞台も観たで。あ、紹介するわ。覚えとーけ?桜子。」


薫のおおざっぱな紹介に、桜子は慌てて頭を下げた。


「桜子です。こうしてお話しするのは初めてですね。でも、園遊会で舞ってらしたのを覚えてます。今日の舞台も、素敵でした。」


「……ご丁寧に、ありがとうございます。芳澤菊乃と申します。」


別人のように取りすました声に驚いて、顔を上げた。


菊乃は、慇懃無礼なまでに深々とお辞儀をしたあと、桜子をねめつけていた。



……私……なんか……睨まれてる?

< 535 / 666 >

この作品をシェア

pagetop