いつも、雨
たじろぐ桜子の肩を薫が抱き寄せた。


「光も来とるんやろ?せっかく桜子も一緒やし、喋ってくるわ。菊乃も来るけ?」

「行く!」

「今はダメだよ。菊ちゃん。お客さまへのご挨拶が終わってからのお約束でしょう?」


菊乃の即答を遮るように、そばにいたイケメンがたしなめた。

若手歌舞伎俳優の中村如矢(ゆきや)だった。


テレビでも見かけるセレブに怒られても、菊乃は頬を膨らませて如矢を睨んでいた。



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結局、桜子と薫は、早々に会場を出た。

光は廊下のソファにおさまって居眠りをしていた。



「起こしたらかわいそうかな?」

桜子のごくごく小さなつぶやきで、光はぱっちりと目覚めた。


「さっちゃん!?え?薫も?どうしたの?」


驚く光の前に、2人は並んで座った。


「どうもこうも。光くんに会いに来たの。……知らなかったな。光くんにあんなに綺麗な彼女がいたなんて。どうして今まで教えてくれなかったの?」

少し拗ねたような言い方になってしまったことに、桜子本人が一番驚いていた。


……とっくに光くんのとこは諦めて、吹っ切ってたはずなのに……ずっと内緒にされてたことがおもしろくなかったのかしら……。



光は、珍しく狼狽していた。

「いや、だって、そんな……。ええ?」


「……まあ……光の気持ちもわからんでもないけどな。」


しみじみとそう言ってから、薫は突っ込んだ。


「で、なんで、菊乃は桜子に敵意持っとーねん。光、菊乃に、桜子のこと、なんてゆーとんねん。」



冷静なようで、薫も苛立っていた。


菊乃が桜子を睨んでいたことも、桜子が菊乃のことで光を責めたことも、薫にはおもしろくなかった。



光は2人から責められ、ようやく事情を察知して、ため息をついた。

「……ごめんごめん。菊乃さん、初対面のとき、さっちゃんが綺麗だから、僕とさっちゃんの関係を誤解したんだよね。その時のイメージが強すぎるらしくて、未だにさっちゃんに対して対抗意識消えないみたい。なんか失礼なこと言っちゃったのかな?ごめんね。後でちゃんと叱っておくから。ほんと、ごめんね。」
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