いつも、雨
「薫くん!急に何言い出すの!ゲリラって何?びっくりするわ、もう。……普通に、お茶のお稽古の時に、恭匡さんをお招きするだけでしょ?……興が乗れば、お点前してくださるかなーって……期待はしてるけど……。」


桜子の慌てぶりがおかしくて……それに、恭匡におよそにつかわしくないゲリラという言葉がおかしくて、領子は笑った。


義人がこれまで見たことのない、快活な笑いだ。


……そりゃまあ、あの社長が……父が、子供の頃からしつこく惚れ込んでらっしゃる女性だから、単に美しいだけじゃないんやろうけど……その魅力を振りまく人ではないからなあ。

目の前で声を挙げて笑う領子は、なるほど、チャーミングかもしれない。



要人は、なるべく自然な笑顔を作って、領子に言った。

「……面白い男でしょう?失礼もあるかもしれませんが、社会で恥をかかないよう、おばさまからもイロイロ教えてやってください。……お茶のお稽古って、孝義くんの寺?じゃあ、俺も行こうかな。おばさまも、お迎えに上がりますよ。ご一緒しましょう。」



思わぬ誘いに、領子の笑いが引っ込んだ。


マジマジと義人を見る。

社交辞令でも、からかっているのでもないらしい。



領子は、困ってしまって即答はできなかった。



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さすがに、ゴールデンウイークの間は、要人と領子の逢瀬はお預けだ。




誰にも相談できないまま……数日後、ゴールデンウイークの最終日に、義人が領子を迎えに来た。




「……ご、きげんよう……義人さん。」

昔から馴染みのお手伝いさんのキタさんではなく、百合子が玄関を開けて顔を出した。


幸せな結婚をして2児の母親になって年齢を重ねても艶やかさが増した美しい異母妹に、義人は心からの笑顔を向けた。


「久しぶり。元気そうやな。よかった。……領子おばさまは?」

「今、参りますわ。……今日のお茶会、恭匡さんも同席されるって、本当ですの?主人も行きたがってましたわ。」


百合子自身も同席してみたい興味はあったが、義人への未練を勘ぐられたくなくて封印した。


なのに義人は、さらりと誘った。

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