いつも、雨
「そんなことより、竹原も行ったほうがよろしいんじゃなくって?ご親戚なのに。」

「もちろん、参りますよ。領子さまをご自宅にお送りいたしましたら、行くつもりです。」


そう言いながらも、車は、領子の自宅とも、要人の自宅とも違う方角へと進んでいる。

……連休中、逢うことを我慢していたから、こうして逢えたこと自体はうれしいのだが……ゆっくりする時間はないだろうに。

そもそも、明日から平常に戻るのだから、いくらでも逢う機会は作れるはずなのに、たった1日を待てない要人に、領子は苦笑した。


「……しかし、存じませんでした。仰ってくだされば、機会をお作りいたしましたのに。……いや、確かに、恭匡さまのたてられたお茶は美味いと思いますが……まさか、領子さまがわざわざ足を運ばれるほどご所望されていたとは。」

要人もまた半笑いだった。


領子は、少し気恥ずかしく思ったが、開き直った。

「別にそこまで切望していたわけではないもの。……薫くん?桜子さんの旦那さまの。あのかた、楽しいかたね。……いつの間にか、あのかたのペースに乗せられて、気がついたらこうなってましたわ。……ふふ……やっぱり、竹原に似てるわね。」


……やっぱり?


「……そう……思われますか?……ふむ……。」

要人は、悪い気はしないようだった。




辿り着いた行きつけのホテルの一室で、嵐のように、2人は交わった。

夢見心地のまま、領子は帰宅した。


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その夜、療養先の湯治旅館から、キタさんが病院に運ばれたと連絡があった。


朝になるのを待たずに、領子は一夫とともに病院に駆けつけた。


キタさんは、昏々と眠っていた。


……どこからどう見ても、すっかり、おばあちゃんになっちゃって……ううん、それは、わたくしも、同じね。

領子は、子供の頃から慣れ親しんだねえやの手をそっと握り、静かに泣いた。



キタさんは、3日3晩、昏睡状態に陥ったあと、ようやく目を開けた。


旅館と病院を行ったり来たりして、ほとんど眠れてなかった領子のやつれた顔を見て、キタさんは言った。

「お嬢様。また、そんなお顔をなさって……。あまり意地を張られると、いい加減、竹原さんに呆れられちゃいますよ。」
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