いつも、雨
しかも、娘たちも、婿たちもいるのに。


要人は、あくまで昔からの知人として、下座に座ったが……そういうわけにもいかないらしい。


娘の由未がやってきて、自分達より上座に来てくれないと困ると訴えた。


……こういう時の序列は本当に難しい。

主家である天花寺家を立てたい要人と、そうは言っても舅をないがしろにできない娘夫婦は、正式であればあるほど、すんなりとはいかない。



孝義の妻の葬儀の際は、近年のご縁が優先されたせいで、竹原家の面々が、天花寺家よりも上座に位置した。

しかし今回は橘家が喪主の葬儀なので、要人としては、親戚面して上座に行くわけにはいかない。



結局、譲り合っていることに呆れた一夫によって、要人は恭匡の隣に連れられた。

座布団をずらし、どちらが上座とも下座とも言い切れない微妙な場所に座らされ、要人と恭匡は苦笑するしかなかった。




キタさんの葬儀は、小規模ながらしめやかに粛々と執り行われた。


通夜の席でも、告別式でも、要人は領子に声をかけずに、ただ見守っていた。




斎場には行かずに、出棺を見送った後、秘書の待つ車に戻った。

「やれやれ。やっと喪服を脱げるな。ゴールデンウイークが終わってから、立て続けだったな。……もう当分、ないといいのだが……。」

何の気なしにそう言ってから、要人は口をつぐんだ。



昔から、葬儀は、重なる時は重なるものらしい。

こう短期間に2件あったということは……3件めも来るのかもしれない。

まさか、な。


いや、そんなはずは、ない……。


打ち消しても、打ち消しても、心に広がった不安は解消しなかった。







もうすぐ自宅という時に、要人の携帯が鳴った。

息子の義人からだ。


……いつもなら、秘書の原に連絡を寄越すのに、直接俺にかけてくるなんて、珍しいな。


ざわざわと、またしても、言い知れない不安が席巻した。


「もしもし?どうした?何かあったか?」

「……お父さん……。」


いつもは、「社長」と呼ぶ義人が、かつてのように父と呼びかけた。


それだけで、充分だった。


不安が確信に変わる。


「義人。今、どこだ?病院か?」

「……はい。病院です。お母さんの容態が急変して、今、集中治療室へ運ばれました。……家族に来てもらうように、と……医師に、言われました。お父さんも、来てください。」

ともすれば泣き出しそうな声だった。
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