いつも、雨
家族は、消毒され、白い服を着せられ、マスクを装着して、佐那子と対面した。
何の言葉もかけられず、ただ順番に、その手に、やせこけた頬に触れ、泣いた。
そうして、人工呼吸器が外されても、佐那子は苦しむ様子もなく、静かに息を引き取った。
家族がみんな泣きじゃくるなか、まいらが、くるりと部屋を、天井を見渡したことに、要人は気づいた。
その目に何が映っているのか……わからないまま、要人も同じように上を向いた。
ふわりと、温かいそよ風が頬を撫でたような、そんな不思議な感覚を覚えた。
まいらが、要人を見た。
ポロリと涙がこぼれた。
たまらず、駆け寄り、まいらを抱きしめた。
まいらは、要人の背中に腕を回して、静かに嗚咽した。
「……おばあちゃん……戻ってきて……行っちゃった……」
「……そうか。」
要人は、まいらの言葉を疑わなかった。
ここ数日、そこにいるのにずっと感じなかった妻の気配を、たった今、やっと感じた気がした。
たぶん、孫の言うとおりなのだろう。
佐那子が最期にもう一度、要人に優しい温もりを与えに来てくれたのだとしか思えなかった。
**********************************************************************************
葬儀は、佐那子がかつて希望していた通り、自宅で執り行った。
昨今では家族葬ですら葬儀専用のホールや斎場併設の施設で行うことが多いなか……たまたま、この2週間で要人が関わった3件の葬儀は、規模は違えど、どれも自宅での葬儀だった。
「クリーニング屋さんに、気の毒がられました。」
特急便で仕上げてもらった喪服を準備しながら、秘書の原がそう報告した。
「……続き過ぎたな。確かに。」
慣れることではないが、覚悟はできていたのかもしれない。
いや、諦めだろうか。
要人のみならず、家族の誰もが、親類や参列者の前で涙を見せなかった。
佐那子の残した愛情に支えられて、残された家族で支え合って、滞りなく葬儀を終えることができた。
****************************************************
季節が過ぎ行き、四十九日の法要も終わった。
何の言葉もかけられず、ただ順番に、その手に、やせこけた頬に触れ、泣いた。
そうして、人工呼吸器が外されても、佐那子は苦しむ様子もなく、静かに息を引き取った。
家族がみんな泣きじゃくるなか、まいらが、くるりと部屋を、天井を見渡したことに、要人は気づいた。
その目に何が映っているのか……わからないまま、要人も同じように上を向いた。
ふわりと、温かいそよ風が頬を撫でたような、そんな不思議な感覚を覚えた。
まいらが、要人を見た。
ポロリと涙がこぼれた。
たまらず、駆け寄り、まいらを抱きしめた。
まいらは、要人の背中に腕を回して、静かに嗚咽した。
「……おばあちゃん……戻ってきて……行っちゃった……」
「……そうか。」
要人は、まいらの言葉を疑わなかった。
ここ数日、そこにいるのにずっと感じなかった妻の気配を、たった今、やっと感じた気がした。
たぶん、孫の言うとおりなのだろう。
佐那子が最期にもう一度、要人に優しい温もりを与えに来てくれたのだとしか思えなかった。
**********************************************************************************
葬儀は、佐那子がかつて希望していた通り、自宅で執り行った。
昨今では家族葬ですら葬儀専用のホールや斎場併設の施設で行うことが多いなか……たまたま、この2週間で要人が関わった3件の葬儀は、規模は違えど、どれも自宅での葬儀だった。
「クリーニング屋さんに、気の毒がられました。」
特急便で仕上げてもらった喪服を準備しながら、秘書の原がそう報告した。
「……続き過ぎたな。確かに。」
慣れることではないが、覚悟はできていたのかもしれない。
いや、諦めだろうか。
要人のみならず、家族の誰もが、親類や参列者の前で涙を見せなかった。
佐那子の残した愛情に支えられて、残された家族で支え合って、滞りなく葬儀を終えることができた。
****************************************************
季節が過ぎ行き、四十九日の法要も終わった。