いつも、雨
「……今、ここで、あなたを相手に感情的になっても仕方ないでしょう。……逃げます。今は。……そうですね、お望みでしたら、明日にでも、直接、領子さまにプロポーズしてみますよ。ダメ元でね。失礼。」
要人はそう言って、伝票をつまみ上げると、踵を返してレジへと向かった。
すぐ後ろで一夫が何か言っていたが、無視した。
それ以上、一夫に一瞥もしないまま……要人は店を出ると、待機していた車に乗り込んだ。
「……社長?どうかされましたか?」
秘書の原に尋ねられ、要人は、ふんと鼻を鳴らした。
明らかに、要人は不機嫌だった。
しかし返事がないので、原はそれ以上言葉をかけず、放置した。
しばらくしてから、要人が口を開いた。
「……一夫くんにけしかけられて、明日、領子さまにプロポーズすることになったんだが……指輪が間に合わないとか、花はどこで準備するかとか、いつもと同じことばかり考えている自分に、呆れる。」
……はあ?
原は、マジマジと要人の不貞腐れた顔を見た。
まだ佐那子の四十九日が済んだばかりだ。
納骨さえすませていない。
自宅には佐那子の骨がまだ鎮座して、要人の帰りを待っている。
それなのに、プロポーズだと?
しかも、旦那の勧めで?
……有り得ないだろ。
意味がわからん。
……。
……いや。
さすがに、橘一夫氏も、わけがわからん関係を何十年も続けて……墓場まで持ってくのは嫌になったのか?
答えに窮する原に気づき、要人は苦笑して見せた。
「……君も、呆れたやろ。すまないな。……まったく……、一夫くんは、すごいな。」
「すごい、ですか?」
そもそも一夫のことを、要人や、亡くなった佐那子ほどに評価していない原は、どこまでも懐疑的だ。
かいかぶりすぎですよ、という言葉はさすがに飲み込んだが、要人は大真面目にうなずいた。
「ああ。かなわんよ。俺は。……どう懇願しても、領子さまが俺を選んで下さると思えない。」
「……。」
原は何も言わずに、眉間に皺を寄せて、要人を見ていた。
要人もまた、それ以上の言葉を発することなく、黙り込んでしまった。
*********************************************
翌日、要人はいつものように自宅で朝食をとり、いつも通り、迎えにやって来た原と共に車に乗り込んだ。
要人はそう言って、伝票をつまみ上げると、踵を返してレジへと向かった。
すぐ後ろで一夫が何か言っていたが、無視した。
それ以上、一夫に一瞥もしないまま……要人は店を出ると、待機していた車に乗り込んだ。
「……社長?どうかされましたか?」
秘書の原に尋ねられ、要人は、ふんと鼻を鳴らした。
明らかに、要人は不機嫌だった。
しかし返事がないので、原はそれ以上言葉をかけず、放置した。
しばらくしてから、要人が口を開いた。
「……一夫くんにけしかけられて、明日、領子さまにプロポーズすることになったんだが……指輪が間に合わないとか、花はどこで準備するかとか、いつもと同じことばかり考えている自分に、呆れる。」
……はあ?
原は、マジマジと要人の不貞腐れた顔を見た。
まだ佐那子の四十九日が済んだばかりだ。
納骨さえすませていない。
自宅には佐那子の骨がまだ鎮座して、要人の帰りを待っている。
それなのに、プロポーズだと?
しかも、旦那の勧めで?
……有り得ないだろ。
意味がわからん。
……。
……いや。
さすがに、橘一夫氏も、わけがわからん関係を何十年も続けて……墓場まで持ってくのは嫌になったのか?
答えに窮する原に気づき、要人は苦笑して見せた。
「……君も、呆れたやろ。すまないな。……まったく……、一夫くんは、すごいな。」
「すごい、ですか?」
そもそも一夫のことを、要人や、亡くなった佐那子ほどに評価していない原は、どこまでも懐疑的だ。
かいかぶりすぎですよ、という言葉はさすがに飲み込んだが、要人は大真面目にうなずいた。
「ああ。かなわんよ。俺は。……どう懇願しても、領子さまが俺を選んで下さると思えない。」
「……。」
原は何も言わずに、眉間に皺を寄せて、要人を見ていた。
要人もまた、それ以上の言葉を発することなく、黙り込んでしまった。
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翌日、要人はいつものように自宅で朝食をとり、いつも通り、迎えにやって来た原と共に車に乗り込んだ。