いつも、雨
そんなわけで、領子が女子中学校の入学式に出席している頃、要人は教習所の入所式に出ていた。


天花寺の当主に言われるまでもなく、受験が終わったら免許を取るつもりで申し込んでいた。

春休みはヒトが多いので、今日までずれ込んだが、大体1ヶ月程で免許を取得できる予定だ。


それにしても……。

あれから、何度連絡しても、鴨五郎が電話に出ない。

さすがに心配になってきた。

鴨五郎自身が高齢者だという不安は勿論ある。

しかし、それ以上に……何か、ヤバいことに巻き込まれていないか……。

一度、京都まで行ってみるべきか……。




教習所には、なかなか評判のいいレストランが併設されていた。

だが、見知らぬ女からの秋波やあからさまな誘いが、うっとおしい。

ランチをあきらめて、早々に教習所を出た。

駅周辺の店を何軒か訪ねて、領子への「お土産」を見つくろった。


要人がアルバイトを始めて以来、「お土産」はグレードアップした。

そのへんの草花ではなく、花屋の花に変わったのが顕著だろう。

さすがに明らかに金額のはるような貴金属やブランド品は控えたし、頻度が多いのでラッピングも断っているが、上質なものを選んでいる。

女の子に流行しているファッションやアクセサリーも参考に、領子に相応しいものだけを選ぶ。

……もしかしたら、要人が思い描くお姫さま像にふさわしいアイテムをフル装備させることで、領子をより高嶺の花に育てているのかもしれない。

まあでも、今日はせっかくの入学式なんだし、いつもの「お土産」じゃなく、お祝いのプレゼントでいいか。

要人はいそいそとデパートへ向かった。

領子が喜ぶ顔を想像してプレゼントを選ぶ……。

それは、とても楽しい、ワクワクする時間だった。




要人が天花寺家に戻ると、拙い琴の音が聞こえてきた。

……うん……下手くそだ。

ついつい笑ってしまいたくなる、酔えない音色すらかわいく感じる。

要人はそーっと足を運び、領子のお稽古の邪魔をしないように静かに自室に入った。

雪見障子を上げると、庭の向こうに領子が琴と真剣に格闘しているのが見えた。

まるで敵と対峙するかのように、怖い顔でつま弾いている。

どうやら必要に迫られて、お稽古しているらしい。

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