いつも、雨
まるで赤ちゃんをあやすように、優しく背中を撫でながら

「……子どもたちのことは、もう、いいじゃん。中学生なんだから、子育ては終了ってことにしてさ……。俺も、就職できたし、前ほどがむしゃらにならなくてもいいや。……研究にかまけて、百合子に淋しい想いさせてたよね?……今まで、ほっといて、ごめんね。」

2人にしかわからないニュアンスを込めて、碧生は謝った。



仕事のせいで、ほっとかれた覚えはない。


泉との復縁に、気づかないふりをしてくれていたのだとしか思えない。


それでもこうして、泉との一件を水に流そうとしてくれる碧生のふところの大きさに、百合子は甘えることにした。





……こうして、泉勝利は、百合子の過去の一部になった。




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「社長にもイロイロ心配かけたやろうけど、百合子とはもう会わんから。……心境の変化っちゅうやつや。百合子に飽きたとかちゃうで?……なんてゆーんかな……選手として、一流じゃなくなってしもたことを認めたら……男としても、百合子にふさわしくない気がしたゆーか……。わかるけ?」


突然やってきた泉は、秘書に出されたアイスコーヒーを一気に飲み干して、そう言った。


要人は、こみ上げてくる愉悦を顔に出さないように努めた。

「……わかるような、わからないような……。まあ、君が、百合子を大切に想ってくれていることは、よくわかるよ。ありがとう。……で……わざわざ、百合子と別れた報告に来てくれたのかい?」


改めてそう尋ねると、泉はくしゃっと顔を歪めた。


「報告っちゅうか……聞いてほしかったっちゅうか……。他にしゃべれる奴もおらへんし……。」


「ああ。そうか。そりゃそうですね。……では、このまま、飲みに行きましょうか。失恋の自棄酒。おつきあいいたしますよ。」



ふっと微笑んだ要人を、泉はちょっと睨んで……それから、憮然として言った。


「よぉ考えたら、捨てた女の父親に愚痴るっちゅうのも変な話やな。……まあ、ええわ。適当に連れてってくれるけ?……さっき、車、ぶつけて、捕まってんわ。……アシ、ないねん。」


へ?捕まった?


「事故られたということですか?今ですか?」
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