いつも、雨
驚く要人に、泉はしれっと言った。


「今っちゅうか、さっきぃ。百合子が、かっこつけて、泣きも怒りもせんと、さっさと降りよったから、腹立って、俺もアクセル全開で走り去ったんやけど、近くにミニパトがいよってなあ。追いかけられて、振り切れへんかってん。スピード違反、信号無視、停止義務違反、公務執行妨害、逃走罪?……しかもガードレールに突っ込んで器物損壊。フェラーリも廃車や。」



まさか、逃亡中というわけではないだろうな?

いや、それより、いつも通り元気そうに見えるが、ムチウチとか打撲とか、ダメージはないのか?


「……大丈夫ですか?」

「いや。全然。また免許取り消しやろな。この年で教習所通うの、めんどくさいわ。」 

「……あ、いえ、そうではなくて……しょーりくんのお身体ですよ。フェラーリが廃車になるって、かなりの衝撃だったでしょう?……て……また、と仰いましたか?免停じゃなくて、取り消しですか?」


常識を凌駕することを飄々と言ってのける泉が、要人には、やはり興味深く、おもしろかった。


「ああ。二回めや。前は、スピード違反何回か切られたんと……あ、そうや、高速道路のゲートに突っ込んで壊してしもたんや。」

「……それはまたワイルドですね。そうですか。では何かと不便でしょう。……運転手を派遣いたしましょうか?」 

「はあ!?……何をゆーかと思ったら……自分、マジで、めちゃめちゃやな。社長。」



泉にとっても、要人は不思議な人物のようだ。

そもそも、競輪ファンでもないくせに、娘の不倫相手に対して、好意的過ぎるだろう。



「しょーりくんにはかないませんよ。」

 
苦笑する要人に、泉は首を傾げた。


「そうけ?……まあ、ええわ。運転手、別にいらんで。弟子に運転させるし。……百合子に会いに来ることもなくなるし……別に、そんな不自由ないやろ。」

「百合子のことはさておき、私とはまた会ってくださいね。」


要人の誘いに、泉はニヤリと笑った。


「そのつもりや。嫁、死なはって、社長、夜、暇やろ。いつでも遊んだるからな。誘って。」



……なるほど……。 

百合子と別れた報告だけでなく、佐那子を亡くした要人の様子を見に来たのか……。 


心配、してもらってたのかな。




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