いつも、雨
やっと、まいらは得心した。

「……びっくりした。その話か。私ちゃうで。桜子ちゃんってお姉ちゃんの旦那さんやで。……で、あなたは?誰?朝から、床がびちょびちょになるまで汗かいて、落っこちて、何してるの?」


パタパタと、スリッパの音が近づいてきた。


「まいら!そんな格好で!泉さん?すみません。まいら、着替えておいで。」

パジャマのまま泉と話すまいらを、走ってきた義人がたしなめた。


「へえ……。でかい家は大変やな。パジャマでうろついたら怒られるんやな。ホテルみたいやな。」

「うん。大変。……クマかと思って、見に来てん。人間てわかったし、寝直すわ。」

「クマて。……俺?」


憮然とする泉を残して、まいらは自室に戻った。





「すみません。泉さん。失礼いたしました。……あの、さっきから、変な音と、においがしてるんですけど……」

「ああ。これ?ごめん。マシン壊れた。摩擦で部品、変形したかな。油させばもうちょっと使えたかもしれんけど、堪忍、見つからんかったわ。もがきすぎた。」

「……はあ……そうでしたか。……お怪我はありませんか?」


サイクルマシンが壊れるほどのスピードとパワーって……確かにクマだな……。


義人は棚から清潔なタオルを出して、泉に渡した。

ついでに、床を濡らす泉の汗も、モップで拭いた。


「これぐらいどうってことないわ。……せやけど、個人の家でこんだけ揃ってるて、すごいな。……自分も、社長も、筋トレするんや。」

汗を拭きながら、泉が話しかけた。


「そんなに真面目にはしてませんけどね。……泉さん、社長とは、つきあい、長いんですか?」


義人に問われ、泉は首をかしげた。。


「どやろ。6年……7年?……けっこう、たつなぁ。昼飯食うときに、一緒になったんや。」

連れの女がたまたま母娘だったことは、伏せた。

が、義人はなんとなく察知した。


……百合子の結婚前に別れたと思ってたが……続いていたのか?再燃したのか?



「そうですか。……よく京都には来られるんですか?」


義人の質問に、泉は怪訝そうな顔をした。


「……なんで?」


用心深い質問返しに、義人はあえて笑顔を作った。
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